【Let’s Try Guiding!】改善しない同僚にどう関わる? ~エフィカシー編~ 

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ある中小企業に勤務する加藤麻衣さん(仮名)。彼女は入社6年目。カスタマーサポート部門で日々奮闘中。そんな彼女の目下の悩みは、同じチームに所属するベテラン社員の森本正志さん(仮名)のこと。

森本さんは、仕事の報連相(ほうれんそう)が大の苦手です。おまけに、ミスを隠す癖があります。チームリーダーからもう何度も「報連相をしっかりしてほしい」と指摘されています。けれども一向に改善されず、「改善する気がないのでは?」と、チームメンバーは諦めてしまっています。一方で、森本さんもなんだか元気がないように、加藤さんは感じています。

加藤さんは、この状況を少しでも良くするため、自分にできることはないものかと悩んでいます。森本さんは根はいい人なのです。それはチームの皆も知っています。報連相は確かに苦手だけど、仕事のスピードは早いし、知識も豊富。メンバーが困ったとき、時々助けてくれます。森本さんがもっと前向きになり、報連相もしっかりしてくれれば、皆も気持ちよく仕事ができるし、チームの生産性も高まるはず。

Efficacy(エフィカシー)の観点から考える

他者の前向きな行動を促すのに役立つのが、ガイディングと呼ばれるコミュニケーション手法です。ガイディングの切り口は色々あります。今回は、HEROという4つの観点からなるフレームワークの内、Efficacy(エフィカシー/自信と信頼の力)の開発手法に焦点をあて、加藤さんができる、森本さんへの効果的な関わり方を検討してみましょう。

Efficacyが高い人とは、自信があり、自分自身を信頼している人です。挑戦することに前向きです。困難に直面しても、耐えることができます。森本さんの今の状態は、エフィカシーが停滞していると捉えることができます。逆に言えば、彼のEfficacyを高めるサポートができれば、彼は前向きに行動し、課題にも向き合おうとするはずです。

Efficacyを高めるためには、以下の方法が挙げられます。森本さんのケースも念頭に置きながら記載します。

▼Efficacyを高める方法

  1. 達成体験の提供:彼が成功体験を積むことで自信を持てるようにする。試行錯誤することも重要。内省をしっかり行うことで、経験値として自信を重ねられる。小さな成功体験でもOK。
  2. 代理体験のデザイン:他者から刺激を得ること。彼のケースでいえば、他の社員がどのように報告連絡相談を行っているかを見せることで、「自分にもできる」と感じてもらうこと。
  3. ポジティブなフィードバック(社会的説得)を行う:彼がうまくできたことに対して、積極的に褒めたり、承認する。それにより、彼が行動を起こす自信を高める。
  4. 心身が健康で前向きな状態 (情動的喚起)のサポート:よい緊張感を保ちつつも、ドキドキ・ワクワクしているような心理状態に彼があるかどうかを考える。

さて、もう一度ここで加藤さんに登場してもらい、ご本人としてはこれらの項目で実際にサポートできることはありそうか聞いてみましょう。

達成体験の提供

加藤:達成体験ですか?達成してくれないから困ってるんですか…。でも、報連相をしてもらうにしても、それをサポートするための小さな目標やタスクを設定しておいて、達成体験を積んでもらえればいいんですね。そう考えると、こちらの気持ちとしてはちょっと楽かも知れません。そりゃ、いきなりやれと言われても、簡単にできるなら苦労しないですよね。

そういえば…実際の森本さんの仕事の状況を思い返すと、メンバーからは成功どころか失敗ばかりが指摘されている状況だと思います。実はちゃんと報連相をしてくれていることも、きっとありますよね(私もスルーしてた?)。彼の中で失敗だけが心に刻まれているのであれば、それは何とかしたいです。でも、どうやって?

代理体験のデザイン

加藤:なるほど。本人が何か達成しなくてもいいんですね。代理体験を上手く起こすは何か工夫できるかも知れません。そうだ!新しく部署に加わった新入社員の頑張りを、チームミーティング内などで共有していくのはどうだろう。新人であれば、報連相のことをフィードバックしても自然だし。新人へのフィードバックを通じて、ベテラン社員にも変わってもらおうという作戦。これなら私にもできそうだし、チームの一員として新人教育も頑張れそう。

ポジティブフィードバック

加藤:達成体験でも言いましたが、失敗に注目するんじゃなくて、森本さんが報連相をしてくれたときに注目したいです。報連相に限らなくてもいいですね。良いことを積極的にポジティブフィードバックをしたいと思います。

いや、でもちょっと待ってください。私の立場からベテラン社員の先輩に対して、「よくできてますね!」というのは、ちょっと違いますね。あっ、それなら上司や先輩を巻き込んで、フィードバックを伝えてもらうという作戦ならありかも?

私ができるとしたら、感謝をしっかり伝えることですね。。より意識して、『こうしてもらえたから、助かりました』と森本さんに伝えようと思います。

心身が健康で前向きな状態 (情動的喚起)

加藤:これを聞いてあることを思い出しました。実は、社内にパワハラ気質で攻撃的な営業社員がいるんです。森本さんは去年からその社員と連携して仕事をすることが多くなっていて…。そのメンバーのせいで、心身が疲弊している様子なんです。そう考えると、森本さんが報連相が苦手だからダメなんだと、森本さんにだけ矛先を向けるのはなんだか違うと思えてきました。確かに森本さんは報連相が苦手です。ですが、もしかすると彼の心身の状態が整えば、ミスは減るのかも知れません。チームにも協力してもらって、その営業社員への対応を考えたいです。

自分の関わり方次第で、良い影響を与えられる

あなたが加藤麻衣さんだとして、まず一歩目の行動を起こすことができそうな気持ちを今持てているなら、それはガイディング成功です。HEROの観点から課題を整理し、行動の糸口を見つけることができます。行動すれば新たな課題にぶつかるでしょう。そこでまたガイディングをする。そのサイクルを回し続けることが大切です。

もし加藤さんが行動の糸口を見つけられない場合、例に挙げた職場はどうなっていくでしょう?性悪説に基づき、業務のダブルチェック、いやトリプルチェックでベテラン社員を含むメンバー同士の監視体制を強化していく未来だったら…?確かにそのミスは防止できるかも知れません。しかしそれでいいのでしょうか。少なくとも森本さんは停滞したままだし、先ほどの新入社員が転職を考えてしまうことを、筆者は想像します。

周囲の誰かがイキイキと前に進むために、自分にできることは何だろう?もしかしたら、自分の関わり方次第で、少しでも良い影響を与えられるかもしれない。そう感じる瞬間が、仕事や私生活の中にあると感じている。そんな方にこそ、ガイディングを知ってほしいと思います。

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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