こうすれば「ダース・ベイダー」にならなかったのに。オビ=ワンのマネジメントを考察する。

記事

先日久しぶりに、映画「スターウォーズ」のDVDを息子と観ました。私のスターウォーズ好きを息子にも共有したい。そう思い戦闘シーンが特に多いエピソード2、エピソード3をチョイスしました。後に「ダース・ベイダー」となってしまう青年、「アナキン・スカイウォーカー」が、なぜダースベーダーに闇堕ち(=いわゆる、暗黒面/ダークサイドに堕ちた)のかが中心に描かれています。いわばダース・ベイダー前夜的な位置付けです。

以前から大好きなエピソード回ではあるのですが、久しぶりに観て、何故か少しイライラしてしまったんです。アナキンの師匠である、「オビ=ワン・ケノービ」に。そんなバカな。オビ=ワンは私が子どもの頃から大好きなキャラクターの一人です。

では何にイライラしたかというと、それはアナキンに対しての”マネジメント”です。「オビ=ワン!それは違う!」というマネジメントの改善点が目についてしまったんですね。オビ=ワンに悪気はないけれども、むしろ愛情なのだけれども、でも少しだけアプローチを変えていたなら、アナキンを救えたんじゃないか?と。

そこで、オビ=ワンのマネジメントに注目して、考察と提言を試みたのが、本コラムです。というのも、このテーマを私達の仕事の職場に置き換えて考えてみると、マネジメントの示唆がかなり多いんじゃないかと思ったんです。ぜひ、オビ=ワンを上司、アナキンを部下と頭で置き換えながら、読み進めてほしいです。

2人の異なる行動性向タイプ

まずは二人のタイプを分析してみます。人によって、何かに動機付けられたり、意欲が高まるポイントは異なります。自分が嬉しいと感じるその声掛けが、相手にとって嬉しいものとは限りません。効果的なマネジメントにおいて、タイプを認識することは不可欠です。

ここでは、BeingDoingチェックという、当社が提唱している行動性向タイプから考えます。タイプ分類は、下記の画像を参考にしてください。なお、オビ=ワン、アナキンのタイプ分類は、あくまで筆者の主観です。

オビ=ワン・ケノービの行動性向タイプ

オビ=ワンは、強い使命感が行動の原理にある気がします。DAタイプの印象です。もしくは、実直慎重という意味では、DDタイプの面もあるかも知れません。ルール(ジェダイの掟)には厳格です。リスクを認知しながらも、冷静に行動するのが彼の特徴です。

アナキン・スカイウォーカーの行動性向タイプ

アナキンは、BAタイプという印象です。使命感以上に感情を基点として、積極的に行動を起こすことができるタイプです。ちなみに、オビ=ワンに対しては、「慎重過ぎる」という思いを持っています。

これらのタイプの違いも念頭に置きながら、次章をご覧ください。

【考察】アナキンがオビ=ワンに抱く思い(不満)

では、どうオビ=ワンがアナキンに関わっていれば、アナキンが前向きにパフォーマンスを発揮できる状態に導くことができたのでしょうか。ここでは、アナキンの思いを考察します。

➀「僕の話をまるで聞こうとしない」と思っているアナキン

エピソード2の最初、後にアナキンの妻となるパドメ・アミダラ議員の護衛シーンに注目します。オビ=ワンとアナキンは、ジェダイ評議会からパドメの護衛の任務を命じられます。会社で例えると、経営会議での意思決定により、現場にミッションが降りてきた感じです。アナキンはパドメに対し、「私が犯人を捕まえます」と宣言します。

これに対する、オビ=ワンのコメントが、問題あり!です。オビ=ワンのコメントを抜粋して下記にまとめると、こんな感じです。「評議会の指示の枠を超えるな。出過ぎた真似はするな。私の指示に従え。評議会の指示に従えばいいのだ。お前はまだまだ若い。」。アナキンは、「命令には犯人の捜査も含まれて当然です。」と主張し、明らかに納得していない様子。しかし、「お前はまだ若い」というオビ=ワンの言葉を最後に、渋々了承します。

さて、オビ=ワンの主張は、多分命令には忠実なのだと思います。しかし問題は、アナキンと対話するという姿勢を見せていないことではないでしょうか。そう決まってるんだから、そうするのが当然だという物言いになってしまっています。これ、会社でもありそうですね。「なぜこの目標?」「なぜこの業務をやる?」そんなことは良いから、とにかくやれ。こんな上司の態度が続くと、部下はきっと本音を言わなくなります。言っても無駄だと思うでしょう。

後のある場面では、「(オビ=ワンは)慎重過ぎて、僕の話をまるで聞こうとしない。」と漏らしているアナキン。対話が不足していることが伺えますね。

②「評価してくれない」と感じているアナキン

アナキンは、フォース(銀河系のあらゆる生命を繋ぐエネルギー)に恵まれ、圧倒的な戦闘能力を持っています。しかし、「オビ=ワンは認めてくれない」と周囲に漏らしています。アナキンの中では、自分は強いから評価されるべきだという思いがあります。なんならオビ=ワンよりも自分の方が優っている。なのに準備不足と独り立ちさせてくれないと、不満たらたらです。オビ=ワンの見解としては、「才能が彼を傲慢にしている」とジェダイ評議会のメンバー(ヨーダ、他)に話をしています。

③自分のWill(実現したい思い)を打ち明けないアナキン

アナキンは、幼少期にその才能を見いだされます。彼がジェダイへの道に進むと決断した大きな理由は、「奴隷の身である母親を救うため」でした。その後アナキンは、自分が母親が苦しむ夢を見てうなされていることを、オビ=ワンに打ち明けます。しかしオビ=ワンは、悪夢は一時的なものとして取り合いません。しかしアナキンの見た夢は現実となり、駆け付けたときには既に遅く、母はアナキンの腕のなかで亡くなってしまいます。

「二度としくじらない」と、愛するパドメは絶対に助けることを心に誓ったアナキン。しかし、今度はそのパドメが出産によって死ぬという悪夢を見てしまいます。パドメはアナキンに対し、「オビ=ワンに相談してみたら?」と提案するが、アナキンは、「助けなんていらない」と回答します。

このあと、アナキンは悪夢のことをジェダイ評議会のトップである「ヨーダ」に相談します。しかしヨーダは、「失うことの執着を捨てよ。」「死は生の一部である。受け入れなければいけない。」とコメントするに留まります。正論です。しかしパドメの死を回避したいアナキンにとっては、これは回答になっておらず、ますますストレスをため込むのでした。

アナキンの悩みに寄り添った黒幕

黒幕である、銀河共和国(主人公側)のパルパティーン最高議長(ダース・シディアス)は、アナキンを暗黒面に誘惑します。「フォースの全てを知りたければジェダイの狭い視野では無理だ、暗黒面を学べ。そうすればパドメを救う事もできる」と。

そのほか、「君ほど才能豊かなジェダイは稀だ」など、承認欲求が満たされていないアナキンに対して、これでもかと色々な場面で褒めシャワーを浴びせています。

アナキンは、パルパティーンが黒幕であると気付き、一度はジェダイ評議会へ報告したものの、最終的には、「力がほしい(生き返らせたい)」という思いが勝り、パルパティーンが負けそうになったタイミングで手を貸して、もう後戻りできないと、暗黒面に落ちてしまうのでした。

【提言】オビ=ワンはどうすればよかった?

闇落ちしてしまったのは、アナキン自身の問題も、もちろんあります。一方で、アナキンの思いを紐解くと、オビ=ワンの関わり方次第で、もしかすると運命を変えることができたのでは?そんな思いにはなりませんか。

では、具体的にオビ=ワンはどうすればよかったのか。筆者は、ジェダイマスターならぬ、サイキャップマスター(PsyCap Master/心理的資本開発指導士)です。ポジティブな心のエネルギーを高める手法「ガイディング」を駆使して、僭越ながらオビ=ワンに提言します。(もう遅いけど。)

Will(実現したい思い)を問う

アナキンは何を実現したいと思っているか、オビワンは明確に答えることができたのでしょうか?アナキンのWillについて、本人と対話をしましょう。

オビ=ワンはアナキンに対して、「強くて賢い自慢の弟子だよ。望んだ以上の立派なジェダイ。だが我慢も覚えろ。評議会に認められるのも遠くない。」と伝えています(エピソード3にて)。確かにアナキンは、ジェダイ評議会に認められたいという思いを持っています。しかしそれは手段(Way)の一つです。アナキンが本当に実現したいことは、「パドメを救うこと」でした。オビワンは、ジェダイ評議会に認められるための支援はしているが、アナキンにとって最も大切であり、原動力であるWillの支援は、できていなかったと言わざるを得ないのではないか。

これは、会社でも起こり得る話です。素晴らしい営業成績を上げている部下に対して、「素晴らしい。管理職への登用はもうすぐだぞ!」と声を掛けるとします。しかしその部下が本当に実現したいWillが別にあるとすれば、どうでしょうか。例え営業成績を褒めてもらったとしても、そこにWillを見いだすことができていないなら、心から嬉しいとは思えないかも知れません。

Willの視点を持ってアナキンと対話ができれば、アナキンのWiiがもっと深まり、別の観点を見いだすことができたかも知れません。アナキンが望んでいたのは、本当に「パドメの命が助かること」でしょうか?議員であるパドメが実現したいのは、民主主義であり、平和な世の中でした。パドメの命が助かったとしても、帝国に支配された世を彼女は望んではいないことが想像できます。アナキンの真のWillが、「パドメや、生まれてくる子達の幸せ」であれば、アナキンの行動原理が変わったかも知れません。

ジェダイ評議会の期待を明確にし、目標を設定する

Willが明確になったならば、次にジェダイ評議会が期待することとを明確にして、適切な目標を設定しましょう。オビ=ワンは、「お前はまだ若い」「才能が彼を傲慢にしている」と言っていますが、具体的には何が足りないのでしょうか?戦闘における実績だけでは、ジェダイ評議会は彼を信頼しないことは明白です。

オビ=ワンは、できることならジェダイ評議会とも話し合った上で、アナキンに何が足りないのか。それを達成するにはどんな行動が必要なのか。どんな考え方を身につけるべきなのか。それらを明確にする必要があります。その上でアナキンとも対話し、アナキン自身が「今のままでは、ここが足りないんだ」と現状を適切にリスクとして認識することが必要です。そして、具体的かつチャレンジングな目標を設定した上で、目標に向かって取り組む。それを評価する。アナキンが目標に腹落ちした状態で任務に取り組むことができるとベターです。

さらに、アナキンの実現したいWillと、ジェダイ評議会が期待することとの間に、接点を見いだすことができればベストです。設定した目標を頑張ることが、パドメを救うことにも繋がると彼が感じられるのなら、より前向きなエネルギーを持って、パフォーマンスを発揮することができると思います。

Wayを一緒に考える

アナキンは、パドメを助ける為の術(Way)が一つしかないと思い込んでいます。パドメを救うことができる他のWayを一緒になって検討してみるのはどうでしょうか。B案、C案のWayを見つけることができたかも知れません。

ところで、パドメの生死は本当にアナキンがコントロールできる事象なのでしょうか?実は、パルパティーンの言葉を紐解けば、彼は一度も「必ずパドメを死から救える」とは発言していません。言葉巧みに暗黒面に誘導されたに過ぎないのです。自分がコントロールできること、できないことを適切に切り分けて捉えることが重要です。そして、過度に悲観的にならずに、コントロールできることに集中し、Wayを描き、行動しましょう。

良い点・在るものに注目する思考を身につけてもらう

人は悪いところや不足しているところに焦点をあててしまいがちです。特に、アナキンはそのような言動が目につきます。パドメと10年ぶりに再会したとき、「パドメは僕のことを覚えていなかった。僕は毎日忘れたことが無かったのに」と口にします。黒幕のパルパティーンの推薦でジェダイ評議会のメンバーになったときは、「評議会のメンバーなのに、マスターじゃないなんて!」とキレます。

そんなアナキンに、オビ=ワンも何もフォローしていなかった訳ではありません。「彼女(パドメ)は喜んでいたぞ?」「お前の歳で評議会のメンバーになることは異例だぞ?」と、励ましています。しかし、ここまで触れたエピソードからも、アナキン自身は何事にも悲観的に捉える傾向にあることは確かです。オビ=ワンが思っている以上に、「うまくいっていることはあなた自身のおかげ」「うまくいっていないことはあなたのせいではない」ということを第三者の視点から伝えてみましょう。

最後に

愛ゆえに暗黒面に堕ちたアナキン。オビ=ワンは、ダース・ベイダーとなったアナキンとの最終決戦(ムスタファーの対決)で、アナキンに対して「(パドメの心が離れてしまったのは、)お前自身が招いたのだ。」と言っています。一方で、「お前の導き方を間違った。私のミスだ」とも発言しています。対話次第でアナキンを善に導くことができたかと思うと、オビワンからすると、後悔してもしきれないと察します。アナキンが闇落ちする前に、「パドメがお前の立場ならどうする?」と問うことができれば、、、。

さて、アナキンとオビ=ワンのストーリーを職場に置き換えたとき、どうでしょうか。あなたは部下に対して、対話によって部下の心理的資本を高め、イキイキとパフォーマンス発揮ができる支援はできていますか?ついつい、”管理”をしてしまい、むしろ心理的資本を抑制していることはありませんか?

書籍:経営学とはなにか(日本経済新聞出版)で、著者である経済学者の伊丹敬之さんの言葉を引用します。

つまり「管理する」のではなく、「影響を与える」ことを考えるのが、リーダーの経営行動の原理にならざるを得ない。だが、多くの人は、ついつい管理に傾きがちになる。しかし、管理がすぎればそれは管理される側にとっては抑圧感につながりかねず、事をなすはずの人たちの心理にマイナスの影響が出てしまう危険すらある

ぜひ、心理的資本を高める手法「ガイディング」を、実践してほしいと思います。部下が離職する前に。「お前を弟のように思っていた。愛していた。(オビ=ワンの言葉)」では、悲しいけど手遅れなのです。フォースと共にあらんことを。

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まさに、アナキン・スカイウォーカーにも通ずるテーマです!職場のリアルな題材をテーマとしています。講座の詳細は、ウェブサイトからご覧ください。

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赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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