経営をするうえで危機感は常について回ります。私の場合、特に資本力もない小さな会社なので、ヒリヒリするような危機感をずっと味わっています。
でもその危機感というか、「これってちょっとマズいかも?」という直感からのアイデアや行動が結果的に新しい挑戦につながってきたように思います。もちろん、危機からの脱出にもなってきました。
ただ、ヒリヒリするような危機感は当然ながら相当なストレスです。
できれば味わいたくないものです。
しかし、危機感をまったく感じなくてもよい状態にいると、結局なにもしないまま、ぼんやりと過ごしてしまいそうで、結局なにも生み出さないような気もします。私の本来の個性はのんびり屋なので、余計にそうなっていたでしょう。
ポジティブ感情とネガティブ感情が人・組織に与える効果
入山章栄氏の「世界標準の経営理論」(ダイヤモンド社)の中で、「感情が人・組織に与える複雑な効果」(P405 ~410)について、テキサスA&M大学のジェニファー・ジョージ氏の論文レビュー(2007年)に基づいてまとめられています。
抜粋すると、
法則2 ポジティブ感情は、モチベーションを高めやすい
法則3 ポジティブ感情は、他者に協力的な態度をとることを促す
法則4 ネガティブ感情は満足度を下げるのではサーチを促す
法則5 ポジティブ感情は知の探索を促す
法則6 ネガティブ感情は知の深化を促す
以上より、ポジティブな感情は満足度を高めたり、やる気を高めたり、協力関係を促し、知の探索=新奇性への挑戦行動につながりますが、ややもすると油断や気のゆるみにもつながりかねません。ネガティブ感情はサーチ、すなわち新たな知見への関心を生み、修正や改善につながります。
ネガティブ感情の危機感をポジティブ行動に変える心理的資本
「危機感」はネガティブな感情です。このネガティブな感情をそのまま周囲の人にぶつけたところで決してよい結果にはなりません。
ネガティブ感情の伝播は、仕事への満足度を下げ、モチベーションを落とし、他者に協力せず、新しいことにチャレンジしなくなるからです。
ただ、危機感が行動の背中を押すことも事実です。特に経営者や責任者に危機を察知する能力がないと、それこそ危険です。そう考えると危機を察知して、それを自分の中でポジティブ感情に変換して周囲に伝えることが求められます。そのマインドセットに役立つのが心理的資本です。
私は、心理的資本のおかげで、ヒリヒリの危機感を少し自分でコントロールできるようになったと思います。
私の場合、心理的資本の構成要素のHERO(Hope、Efficacy、Resilience、Optimism)を意識して、
- 何を目指しているんだっけ(Hope)
- 危機感に不安がっていてもダメだ。勇気を振るわないと(Efficacy)
- どうやって乗り越えようか(Resilience)
- まずは今できることに集中して前向きにいこう(Optimism)
以上のように気持ちを整え、できる限り危機感をポジティブに捉えようと意識できるようになりました。
Hope | 意思と経路の力 | こうありたいという目標(Will )を明確に持ち、そこに至る道筋(Way)を複数柔軟に描く力 |
Efficacy | 自信と信頼の力 | やりとげることができるという自己信頼感。有能感 |
Resilience | 乗り越える力 | 困難やリスクに対しても、それらを乗り越えて大きく成長する力 |
Optimism | 現実的な楽観力 | 失敗やネガティブなことに遭遇しても、前向きに捉え、次の行動を起こしていく力 |
とはいえ、まだまだ完全にコントロールできているわけではないので、イライラしたり、不機嫌になることもありますが、以前の自分よりマシになってきたように思います。
セルフガイディングでネガティブ感情をポジティブに
このように自分自身で心理的資本を高めポジティブ感情を高めることをセルフガイディングと言います。危機感を宝物にする心理的資本。多くの人に知ってもらいたいです。