強い成功体験が邪魔をする!?自分のやり方に固執する人【ケースから考えるガイディング】

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仕事や生活の中で起こり得る場面を切り取り、ガイディングの視点で要因と対策の一例を提示する「ケースから考えるガイディング」シリーズ。今回は「強い成功体験が邪魔をする!?自分のやり方に固執する人」です。

上司と部下がプロジェクトについて議論中です

ここは、とある職場のオフィスのど真ん中。意欲的な若手社員の佐藤さん(仮名)が上司の田中さん(仮名)に何やら新しい企画を提案しているようです。少し覗いてみましょう。

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佐藤

田中部長、今回のプロジェクトについてですが、新しいマーケティング手法を試してみたいと考えています。最近のデータでは、デジタル広告の効果が急速に高まっているようですし、我々もそれに乗るべきだと思います。

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田中

ふむ…佐藤さん、私も確かに新しい手法には興味はあるんだけど。でもね、これまでうちの会社の製品が安定して販売実績をあげてきたのは、私が導入して大成功したマーケティング方法を忠実に守ってきたからなんだよ。

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佐藤

もちろん、田中部長の指導のもとで、我々が成果を上げてきたのは事実です。ただ、時代が変わってきていますし、競争も激化しています。今こそ、柔軟に新しい方法を取り入れるべきではないでしょうか?

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田中

佐藤さんの意見はわかるけど、私はこの方法で10年間結果を出してきたんだ。今さら別のやり方を取り入れる必要はないと思っている。それに、失敗するリスクを取る必要もない。

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佐藤

ですが、そのリスクを避けていては、他社に遅れを取る可能性が高いのではないでしょうか。試験的にでも新しい手法を取り入れることは、将来的に大きな成果を生むかもしれませんが…。

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田中

新しい手法は、結局のところ博打に過ぎない。確実な結果を出せる今のやり方を変えるつもりはない。佐藤さんは、もっと現状を理解して、それに従うべきだ。

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佐藤

そうですか…わかりました。ではこれまで通りに対応しますね。(心の中で:これでは、何も変わらないな…。部署異動の希望出そうか…。いや経験を活かして転職しようかな。)

少し離れた場所で会話を聞いていた西野さん(仮名)は、心配そうに様子をうかがっていました。

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西野

田中部長はいつも成功体験にしばられている気がするなぁ。自分のやり方に固執しているというか。これじゃあ、せっかくがんばっている佐藤さんも愛想をつかしてしまいそう。どうすればいいんだろう。

読者の皆さんは、この場合どのように考えますか?

強い成功体験が思わぬ大きな壁に!

今回のケース、田中部長が過去に得た強い成功体験が思わぬプロジェクトのハードルになっていますね。そんな田中部長に対して、佐藤さんは部下として鋭い提案とフィードバックを投げかけて奮闘しているようにも思います。しかしながら佐藤さんの奮闘むなしく、田中部長は頑なにやり方を変えたくない模様…。どうしたものでしょうか。第三者として心配していた西野さんと共に少し考えてみたいと思います。

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西野

田中部長の過去の成功は、たしかに今の会社の業績につながっていることは分かっているんです。それに成功体験って良いもののはずですよね?

「成功体験」そのものは、その人にとって大きな自信の糧となりますし、とても良いものです。ただし成功体験は蜜の味。ついそればかりに頼ってしまったり、そのレベルで満足をしてしまったりすることがあります。それゆえに、それが自分にとって大きな成功であるほど、別の方法をとって失敗することが怖くなるもの。人は「失うこと」に対してネガティブになるという前提で考えた方が良いでしょう。本当は失敗体験も含めて、試行錯誤を繰り返すことで、その領域に関する経験が積み重なり、結果として本当の意味での自信につながるものなんですけれど。
大なり小なり、こうしたケースはよく起こっているのではないでしょうか。

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西野

田中部長、いつも新しい挑戦には消極的なんです。でも自分が同じ立場なら、たしかに新しいことをやる時は少し尻込みしてしまうかも。

会話の中で佐藤さんが指摘している通り、現状維持でいることの「リスク」を田中部長がどこまで適切に認識できているのかは疑問が残るところです。当然ながら、新しいことに挑戦することも「リスク」がありますよね。大切なのは一方を根拠なく切り捨てるのではなく、それぞれの選択肢にどのようなリスクが存在しているのかを知ったうえで、さらにそれぞれの選択肢をとると、どのような未来が想定されるのかを具体的に考えてみることです。どちらが成果が上がりそうか。その先の成長につながりそうか。失敗した時の損失はどうか。様々に想像をめぐらすことが必用だと私は思います。

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西野

田中部長はもちろんだけど、このままだと部下の佐藤さんのこともちょっと心配です。モチベーション下がってないかな?

ひとつ言えることは、田中部長は「自分のやり方」の一本やりであること。
それこそ一本道しか想定していないとしたら、リスクしかありません。

達成したい目標や、プロジェクトの目的に応じて、複数の道を想定しておくことも必要でしょう。
たとえば佐藤さんの提案に対して、リソース(人手、時間、資金など)に余裕があるのであれば、もし失敗しても許容可能な損失の範囲で試験的に新しい方法を試してみてもらうことも大いにアリだと思います。

結果としてプロジェクトに対する佐藤さんのやりがいも大きくなるでしょう。もし失敗したとしても、そこから得られる経験値やデータは次に活かすことができるはずです。

厳しい言い方をすれば、成功体験に縛られながら自分のやり方に固執してしまっている人は、実はリスクマネジメントが甘く、新しいやり方には自信が無く、他者にやり方を押し付けるだけの強引さだけが際立つ、ちょっとイケていない感じ。これでは周囲にも良い影響があるとは言い難いですね。

改めて、こういった場合、どうしたら良いのか。ガイディングの観点で紐解いていきます。

ガイディングの観点ならこう見る

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橋本

心理的資本を高める手法である「ガイディング」を用いて、仮説を立ててみます。田中さん(仮名)の場合、私ならこう見ます。

Resilience(レジリエンス/立ち直り乗り越える力)の視点

まずは現状のリスクを洗い出しながら、リスクテイクした場合とリスク回避した場合それぞれのメリットとデメリットを丁寧に考える必要があるでしょう。そのうえで、リスクを乗り越えるために、どのような活用できる強みとなる資産や資源があるかも棚卸ししたいですね。田中さんにとって、意欲的で新しい情報も積極的に得てくる佐藤さんの存在は貴重な存在のはずです。また田中さん自身の経験が活きるシーンは、新しい方法に挑戦したとしても多くあるのではないでしょうか。

Efficacy(エフィカシー/自信と信頼の力)の視点

田中さんは新しいやり方の経験が不足しているため、その領域について自信が持てていないだけのようにもうかがえます。せっかく佐藤さんが「試験的にでも…」と提案してくれているのですから、小さなトライで良いので試してみるのも手ではないかと思います。きっとそれくらいの権限は持っているはずですよね、部長?

Hope(ホープ/意志と経路の力)の視点

田中さんは「これまで通り成果を出したい」という想いが先行して空回りしているようにも思います。空回りしている原因は、その想いを成し遂げる方法が「1つ」しかないということです。「こうでなければならない」「こうあるべきだ」「これしかダメだ」というような思考になると、失敗に対する不安が大きくなり萎縮して思うように行動できなくなってしまうことすらあります。
また、部下に「この通りやれ」と言っている限りは、部下が主体的に動く意欲を奪っていき、やりがいそのものを低下させていっていると考えた方が良いでしょう。
ですので、複数の選択肢や手段をイメ―ジできるようにシミュレーションをして目標を見直してみることを提案したいですね。時に部下を”巻き込んで”みてほしいとも思います。

今回お示ししたガイディングは一例に過ぎません。体系的にガイディングを学んでみたいと思われた方は、ぜひPsyCap Master®認定講座の受講をご検討くださいね。

新たな成功体験を増やしながらマネジメントの領域も自信を高めてほしい!

今回のケース、田中部長はプレイヤー時代の成功体験を引きずることになった背景として考えられるのは、業績のみで評価されてきたからなのかもしれません。そのように見れば、田中さんも辛い立場なのかも…。そんなことも想像すると、田中さんが悪い人なわけでは全くありません。

でもガイディングの観点で整理をしていくことができれば、田中さんが新たな領域でも自信をつけながら、部下とも信頼関係を築き、中長期的にチームとして成果を上げながら成長していく未来が見えるように思います。
田中さんを応援します!ぜひ”HERO”を輝かせてほしいです!

こちらの記事「成果を出すにはWay力を高めよう」も参考になるかもしれません。よろしければ!

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に『心理的資本をマネジメントに活かす』(共著)中央経済社,2023年がある。

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