パーパスやWillだけじゃ心のエネルギーを自家発電できない理由

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働く社員のパーパス。キャリア自律。Will-Can-MustにおけるWill。さまざまな言葉がありますが、一言で表現すると「目的」でしょうか。近年、働きがいを高める上で働く目的を持つことの重要性が注目されています。(本コラムでは「Will」で統一します。)

企業では、「パーパス研修」や「キャリア自律研修」、さらには「1on1ミーティングでWillについて対話しよう」といった取り組みが増えています。

Willは非常に大事だと思うのです。何を隠そう、私はこのWillが無ければなかなか動けないタイプです。自分自身が達成したいWillを強く持っています。会社のパーパスへの納得感も重視します。そこに意義を見いだすことができれば、使命感を持って行動に移すことができます。Be&Do提供サーベイ(行動性向タイプ診断/Being-Doingチェック)でもそのような診断結果が出ていて、自分でも納得です。

しかし、そんな私だからこそ、「Will」だけにフォーカスしすぎることの危険性も感じています。重要である一方で、その「Will」が持つ力だけを拠り所とすると、思わぬ副作用が生じる可能性もあるのです。

Willの副作用(筆者の実体験より)

Willの副作用について、私のリアルな日々の仕事の状況や心境も交えながら述べたいと思います。Willは確かに強く持ってるのにも関わらず、行動を起こすための心のエネルギー、つまり心理的資本が停滞し、いわばガス欠状態になる。そんな状態に陥ることがあるのです。特に、こんなときに強く感じます。

  • (Willはあるけど)達成するための具体的な道筋や戦略が見えないとき

目標を達成したいという強い欲求や意志を持っているが故に、進展が見られない場合や、達成への道筋が見えないと、強い焦りや不安に襲われるのです。

このような五里霧中の状態に陥ると、やがてこんな疑問が湧いてきます。

  • 「あれ?本当にこのWillでいいんだったけ?」

自分のWillを疑い始めます。このWillは正しいのか?ただの思い込みではないか?自分に合っていないのでは?他にもっと適したWillがあるのでは?といったマイナス思考が広がり、心の火がだんだんと小さくなっていくのです。

さらに、このマイナス思考が発展すると、こう考え始めます。

  • 「あれ?会社のWill(パーパス)ってこれで合ってるの?」

会社のパーパスや個人のWillに過度にこだわりすぎて、結果的に自分自身が取るべき(自分でコントロールできる)行動に意識が向かなくなってしまうのです。そればかりか、自信を失い、周囲に頼れなくなり、悲観的になっていきます。

もちろん、Willを変えたりアップデートすること自体は良いことです。前向きな撤退もあり得ます。しかし、行き詰まり、自信を失い、本来達成したかったWillを見失ってしまったら、それはとても残念なことですよね。

世の新入社員もパーパス重視になってきたけど…?

私は30代前半ですが、この「Willの副作用」は、今のZ世代と呼ばれる若手社員にも強く当てはまるのではないかと感じています。株式会社学情の調査※によると、自身の「パーパス」や、自身が解決したい社会課題を意識している学生が4割を超えているそうです。 ※2022年の調査。2024年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象

パーパス重視やWill重視の傾向はますます強まっています。ある人事部長はこう言っていました。「既存の社員に対するパーパス研修では、理解や納得に時間がかかることが多い。しかし、新入社員は最初からパーパスありきで入社してくるので、理解が非常に早い。」と。

しかし、すでに述べたように、強いWillを持っているからこそ、壁にぶち当たったときにWillの副作用が現れることがあります。入社以来一度も壁にぶち当たらなかった新入社員は、ほとんどいないはずです。新入社員の早期離職が社会問題になっていますが、強いWillを持つが故の副作用が、その要因の一つではないかと私は考えています。

なお、働きがいに力を入れる先進的な企業は、全世代の社員にWillを教育する方向に舵を切っています。すでにこれは新入社員に限った話ではないかも知れません。

Willに進み続けるには何が必要か?

では、Will以外の要素で、心に火をともし続けるために必要な力とは何でしょうか。そのような思考や心の状態を支えてくれる概念が、心理的資本だと思います。心理的資本は、一言で言えば、行動を起こす原動力(エンジン)と表現されます。

少し分解して考えてみましょう。心理的資本は、大きく四つの要素からなります。

  • Hope(ホープ):意志(Will)と経路(Way)の力
  • Efficacy(エフィカシー):自信と信頼の力
  • Resilience(レジリエンス):立ち直り乗り越える力
  • Optimism(オプティミズム):現実的で柔軟な楽観力

Hopeについて解説を加えます。Hopeは直訳すると「希望」ですが、ここでのHopeは単なる希望的観測ではありません。子どもが七夕に「アンパンマン(ヒーロー)になりたい」と書くのとは異なります。真の希望を持てる状態には、明確なWill(目的地)と、加えてWay(経路)の両輪が必要です。Willの達成のための手段や方法を柔軟に描ける力が重要であり、WillだけではHopeの力は限られてしまうのです。

さらに、Hope以外にも重要な要素が三つあります。Willを達成するために、自信を高める工夫をしていますか?壁にぶつかったとき、どのように対処しますか?物事を前向きに捉える思考力を備えていますか?これらの要素は、五里霧中の状態からWayを見出すための大きな力となります。

自家発電の手順書?あります。

Willは確かに非常に重要です。でも、Willだけでは不十分です。研修で壮大なWillを描いて、それで満足していませんか?壁にぶつかっても、Willへの葛藤や疑念を追い払い、自己解決しながら新たな道筋を見出してWillに向かい続けるためには、心のエネルギーを自家発電する手順を知ることが必要です。この手順は、心理的資本のHEROによって言語化されています。

日本の皆さん、パーパスやWillも大切ですが、より多角的な「心理的資本」や、それを高める手法「ガイディング」を知ってください。届けこの私のWill!

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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