キャリアブレイクを良い転機にするには心理的資本がカギになる?

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先日、APO研こと人と組織の活性化研究会の定例会の場で「キャリアブレイク」についてディスカッションをする機会に恵まれました。

一般社団法人キャリアブレイク研究所の代表理事で『仕事のモヤモヤに効くキャリアブレイクという選択肢~次決めずに辞めてもうまくいく人生戦略』の著者でもある北野貴大さんに話題提供をいただき、学者や企業実務家の皆さんと様々に意見交換をしたのですが、とても面白く興味深く、楽しい時間を過ごしました。

今回はそんな「キャリアブレイク」の話題に触れて、私なりの視点ではありますが整理してみたいと思います。

キャリアブレイクは決して特別なことじゃない

ふりかえってみると自分自身もその当事者だったタイミングがありました。
北野さんの書籍のタイトルの通り「次決めずに辞めた」ことが2度あります。しかも、当時はリーマンショック後の就職難の頃でした。ただ、当時は大変でしたが、その後に転職先が決まるまでの3か月間は、人生のほんの少しの期間かもしれませんが貴重な「キャリアブレイク期間」だったと捉えることができます。
身近にキャリアブレイクしている人がいたり、決して特別なことではないことも認識できました。

「ブレイク」という言葉の意味を問われた時、人それぞれに違う捉え方をするというのも面白いです。
ある人は「中断」と捉え、ある人は「休憩」と捉え、そしてまたある人は「今までの価値観を壊す」と捉える人もいます。

話題提供してくださった北野さんは、キャリアブレイクをひとつの文化にできないかという提案をされていました。それは本人にとっても、周囲の人にとっても、皆が嬉しいメリットがあるような世の中づくりが必要になるとお考えでした。

個人的に北野さんがおっしゃっていた「良い転機ですね」「良い転機を過ごされましたね」という声かけが、とてもステキだなと。「良い天気ですね」と当たり前のように口にしていますが、それくらいの感覚で「良い転機ですね」と誰もが言える世の中って、ちょっとイイ。そんな風に思いました。

「休む」ではなく「離れる」という感覚

休むことじゃなく、いったん「離れる」ということも時には大切ではないか。
その離れた期間に、経験者は「仕事観」が整ったと言われることがけっこうあるそうです。
「観る」はスポーツ観戦でもそうですが、少し離れたところから観ている状態。だからこそ、視野を広げ、視座を高める機会としても有効なのかもしれません。

とはいえ、職場では簡単に「離れる」ことがやりづらい。特に日本の伝統的な職場では。
欧米では長期間の休暇をとり、仕事から一定期間離れるという時間を大切にする文化があるとされます。
実際、当社に在籍しているヨーロッパ出身メンバーは、そのような感覚を持っています。実際に長期間、仕事を離れる時もあります。

良い転機にするには自律とセットなのではないか

一方で、キャリアブレイクをしたとしても、「自由の使い方」が分からなくて苦しくなる人もいるというのは、確かにその通りだとも。研究会の参加者の方からも「キャリアブレイクを良い期間にするのは、キャリア自律とセットなのかも」という意見がありました。

そこで面白いと思ったのが、キャリアブレイクを「良い転機」にすることがうまい人は、子どもや学生の頃に「不登校」を経験していることも多いそうです。考えてみればうなずける話なのですが、用意されたレールの上に沿うのではなく、自らの意志で違うことを選ぶことができているとも言えるわけですから。
不登校は社会問題と言われているが、それは「問題ではない」とひとりひとりが捉えることができれば、社会は変わるかもしれない。
王道を進むことが全てじゃない。王道もあれば小道や脇道もありますよね。そのように考えると、問題が減るのです。北野さんの視点、本当に良いなと私は思います。

また、キャリアブレイクしている人を「助ける」ことが必要か?という議論では、そこで助けたり率先してフォローすることは、ちょっと違うと。例えば無職なのですから、資金面などが苦しいこともあり、つい補助をしたくなることもありそうですが、そこはぐっと我慢が必要。信じて待つようなイメージか。それはとてつもなく難しいことかもしれませんが、ただ突き放すのではなく、見守るという感覚なのでしょうか。周囲の人はものすごく我慢が必要かもしれません。

キャリアブレイクが「良い転機」になる人と「悪い転機」になる人の違いがあるそう。

議論の中でほぼ合意にいたったのは「捉え方」の違いです。
ふりかえった時に、物事をポジティブに捉えられるか、ネガティブに捉えられるかの違いです。
それによっても「失業感」があるのか、「卒業感」があるのかの違いにもつながってくるそうです。

あえて意図的に「ブレイク」する仕組みもありかも

以前、しーさんこと竹林一さんが当社セミナーでもお話してくださりましたが、竹林さんの在籍されていた企業では管理職になって6年目になると3ヵ月休んでいいという制度があったそうで、それは人事制度のイノベーションじゃなかとおっしゃっていました。自分がいなくても部署がまわるということや、自分がいないことでどのような変化があるかを客観的に知ることができるタイミングかもしれません。そして他にやりたいことが見つかったら帰ってこなくてもいい、くらいの度量の広さです。つまり、思い切り自分がこの会社で何を成し遂げたいのか、それともほかに自分の意志が存在しているのか、向き合い見つめ直す期間と言えますよね。

あ、この話、まさしくキャリアブレイクだ、思い出していました。

北野さんから提案があったのですが、職場で「休む」制度を分けてみるのもひとつの手だと。
それは「療養制度」と「キャリアブレイク制度」を分けてとれるようにするということだ。

キャリアブレイクは本人にとっても、会社にとっても、周囲の人や社会全体にとっても、メリットがあると感じられた時に、はじめて文化として当たり前になっていくのでしょうね。

キャリアブレイクと心理的資本の関係

さて、キャリアブレイクと、人の前向きな行動の原動力となる「心理的資本」は密接に結びついているものだと私は考えます。

※心理的資本についてはコチラで概要を解説しています。

「働き続けなければならない」「学校はちゃんと通わなければならない」「〇〇でなければならない」という1本道ではなく、別の方法や手段もあるし、いくらでも道の進み方はあると考えられるようになることはHope(意志と経路の力)と関係します。
複数の経路を思い描ける人は、Hopeが高い人と言えるでしょう。また、複数の経路があるんだと気づくことができたなら、Hopeが高くなります。その過程でWill(意志)が見つかったのなら、より強固になっていくでしょう。

キャリアブレイクというのは、本当に大丈夫なのか?と不安になることもあります。
しかし、集まってワイワイ話してみると、意外と皆がそれぞれにキャリアブレイクに似た経験をしていたり、案外と「面白そうだ」と感じられることがあるそうです。
これはEfficacy(自信と信頼の力、効力感)が刺激される代理体験を得ていますし、相談した時に「あなたなら大丈夫だよ」「あなたの味方だよ」というポジティブフィードバックをくれる存在がいるだけで、前向きに行動を起こして行こうという気持ちになります。

意図したキャリアブレイクならともかく、意図せずキャリアブレイク期間に入ることもあります。そんな時、この状況をピンチと捉えるか、チャンスと捉えるか。この期間を有効に活用し、次へのステップとして捉えられたらどうでしょうか。また、この状況を乗り越えるために、改めて自分の持つ様々な資産(知識や経験や人脈)を棚卸しする機会にもなりそうです。この過程を「良い転機」として過ごせれば、さらに成長した自分と出会うことができるかもしれません。これはResilience(乗り越える力)そのものです。

そして「良い転機」になるか「悪い転機」になるかの違いとなる、捉え方。
現実的に物事をふりかえり、自分にコントロールできること、できないことを分けて考え、自分にできることをしっかりやっていく。そして身近な感謝すべき存在に気づくことができる。新たな機会を探し備えていく。そのように考えることができれば、将来を悲観することなく肯定的に物事を進めていくことができそうです。
これはOptimism(柔軟な楽観力)そのものなんです。

そして、これらは実はキャリア自律している人とも言えるかもしれません。

改めて「キャリアブレイク」の考え方は面白く、そして「働く」ということを改めて見つめ直すきっかけになると思いました。

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に『心理的資本をマネジメントに活かす』(共著)中央経済社,2023年がある。

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