皆さんは「アンラーニング」という言葉を聞いたことはあるでしょうか。
シンプルに言えば固定概念を取っ払い、新たに学び直しをすることです。
「近頃の若い社員は…」
「若手を育てるのは大変だよ」
そう嘆くミドル・シニア層の社員こそ、もしかするとアンラーニングが必要なのかもしれません。
今回はアンラーニングのメリットに触れながら、具体的な進め方やポイントについて紹介します。
Contents
ミドル・シニア層にも必要な「アンラーニング」
アンラーニングとは、新しいものを取り入れながら学びを修正することです。
日本語では「学習棄却」もしくは「学びほぐし」などと訳されます。
自分の経験上で得た知識や作り上げてきた価値観を意識的に白紙へ戻し、本当に必要な価値観や習慣を取捨選択しようという学習です。
ビジネスにおいて学習やラーニングといえば「新入社員が行うもの」「若手社員の知識を補うこと」と捉えられがちです。
しかし今はVUCA(ブーカ:予測不可能)時代に突入。
中堅社員も環境の変化に適応できなければ、時代遅れな人材となってしまうと言われています。
そのため世代を問わず、働いている全ての人が学ぶ機会を得ることが重要だとされているのです。
自ら学ぶ姿勢のないベテラン社員は、過去の経験や価値観が足かせとなり必要な成長のチャンスを失ってしまうかもしれません。
そのためアンラーニングは、新入社員に教育を行っているミドル・シニア層にスポットが当てられていると言えるでしょう。
ビジネスにおける学びでは、学習(ラーニング)と学習棄却(アンラーニング)のプロセスサイクルを絶えず回し続けることが求められています。
アンラーニングを企業で取り入れるメリット
アンラーニングを企業で取り入れるメリットは3つあります。
①ベテラン人材の意識変革
アンラーニングはシニア・ミドル層といったベテラン人材の意識変革につながります。
取り入れることで新しい価値観や変化の中でも、今までの経験を活かした動きができるようになるでしょう。
経験値の多い人材を確保することは、企業にとって多くの利益があります。
しかし経験があるゆえに、時としてその経験に固執し時代にそぐわない決断をしてしまう可能性もあるのです。
アンラーニングを推進する企業には、環境変化に対応できる社員が集まります。
②効率化、DXの推進
アンラーニングは単なる業務の整理だけではなく、抜本的な業務の効率化向上につながります。
アンラーニングが定着すると今までの思い込みやルールを捨て去る発想が芽生え、無駄な業務が減るからです。
従来の価値観を捨て新しい知識を習得することで、現在の業務を新しい視点で見直すことができます。新しい着想の反映や業務フロー改善につながることもあるでしょう。
③人材のリーダーシップ向上
アンラーニングを行うことで、自身の知識や経験を自覚すると共に、客観的に自身のことを認識することになります。これらを全てゼロにするのではなく、改めて自身の資産であり強みとして自己認識をすることにもつながります。
この自己認識が高まることは、自分らしいリーダーシップを発揮して学び続け挑戦をするための自信につながります。人材育成、組織の活性化にも貢献できるでしょう。
アンラーニングを始めてみよう
アンラーニングは資格取得や昇進試験のために行う勉強とは少し色合いが異なります。
そのため、いざ実践してみようと思っても前提知識がなくては難しいでしょう。
次は具体的なアンラーニングのやり方について見ていきたいと思います。
自分を見つめ直す
自分が仕事を行うにあたって考えてきたことや、持っていた価値観を今一度見つめ直しましょう。
アンラーニングを進める上で何よりも大切なことは「自覚」だからです。
「自分の知識やスキルは古いのではないか?」
「もっと効率の良い仕事の進め方はないか?」
など思いつくままに紙やシートに書き出していきましょう。
日々の仕事で経験してきた成功談や失敗談をまとめてみるのも効果的です。
また今いる場所からいったん離れ、他部署や社外での交流・協働の場を持つことでも自分を見つめ直しやすくなるでしょう。
得られた反省から取捨選択をする
次に自分自身で得た反省を、クリティカル・シンキング(批判的思考)により取捨選択しましょう。
物事を批判的に捉えることで、今後の仕事において必要な価値観や考え方が通用するのかどうかについて整理・判断がつくようになります。
取捨選択は一人で行うのは難しいので、社内のメンバーや上司からのフィードバックをもらうと良いでしょう。
また異業種や他部署の人と交流するのも効果的です。
話を聞くことで自分では気づかなかった新たな価値観に気づくことがあるかもしれません。
知識習得を始める
整理して必要な考え方や価値観が明確になった時点で、新しい知識習得を進めていきます。
単に知識を習得するだけで終わらせず、積極的にアウトプットを行うことが大切です。
アンラーニングを進めるときのポイント
アンラーニングは短期間ですぐに効果が見えるものではないので、とにかく繰り返し行うことがポイントです。
新しい知識の習得度合いと活用度合を定期的に測定し、進捗や方向性を見直していくとさらに高い効果が得られるでしょう。
またアンラーニングの動機付けでは、やらされている感を持って進めるのではなく「まっさらな気持ちでもう一度一から学び直そう!」という自発的な姿勢も求められます。
「リスキリング」も効果的
アンラーニングに似た言葉として「リスキリング」があります。
リスキリングとは新しい職業に就くために、あるいは今の職業で求められるスキルの大幅な変化に適応するために必要なスキルを獲得することです。
デジタルトランスフォーメーション(DX)に対応できる人材戦略の一つとして注目を集めています。
捨てることも視野に入れるアンラーニングとは異なり、リスキリングは従来の経験に新たなスキルを付け足しするイメージです。
リスキリングには、主に自律型人材の育成や社員の帰属意識向上といったメリットがあります。
また既存の人材が新技術に対応できる能力開発を培えることから、人材不足を解消する取り組みとしてリスキリングが世界各国の企業ですでに始まっています。
企業は新たな人材を採用するにはコストがかかりますし、そもそもの人材不足といった問題があるでしょう。
だからこそ新たな学習方法を取り入れて、自ら学ぶ姿勢を持ち長く働いてくれる既存社員を育てていかなくてはいけません。
リスキリングもアンラーニングとあわせて知っておきたい人材育成の考え方です。
まとめ:全ての社員にアンラーニングが必要な世界に
仕事のデジタル化・自動化に対応できる高度な技術を持った人材は、今後必要不可欠と言えるでしょう。
今後は全ての社員にアンラーニングが必要な時代だと予測されます。
今回ご紹介したリスキリングも同様です。
だからといって難しく考えずに、まずは自分を見つめ直すところから始めてみましょう。
アンラーニングは自覚から取捨選択したあと、上司のフィードバックを行うことで新たな気づきが生まれます。
そのため個人だけでなく組織全体で、取り組む姿勢が求められています。
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