好業績チームはどうつくるのか

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好業績チームの要件

人的資本に関心が集まっています。人が業績の源泉であるということに改めてスポットがあたっていることが背景です。一方で、人が業績に及ぼす影響としてチームづくりも重要な視点です。
良いチームとはどんな要件なのか。

私が組織人材活性化のコンサルティング会社にいた頃、好業績チームの調査分析をした際に下記の3つの要件が備わっているチームは好業績であることを発見しました。

  • 目標(目的)が明確である
  • プロセスが共有されている
  • メンバー同士、信頼関係がある

この3つが整っていると好業績になっていました。

3つめの「メンバー同士、信頼関係がある」というのは、今、話題の心理的安全性に近い概念でしょう。
一方で、この3つの要件が安定的に確保できるかというと脆い側面もあります。

ある会社の営業所のケースです。全国トップレベルの業績が2年続き、チームの状態も大変良いと聞いており、その営業所の好業績の要因調査の依頼を受けたことがあります。

しかし、私たちが調査に入った頃には、業績が落ち始めていたのです。要因は何かを見ていくと、人事異動があり、これまで中心となってメンバーの支援や情報の共有を推進していた人が異動となり、新たにその人の代わりにきた人はまったくそのような行動を取らない人でチームが崩れていっていたのです。

これまで営業所に貢献していた人は、特に管理職ではなかったけれど、自分がマネジャー職になった時のことをイメージしながら率先して行動していたことが、結果的に営業所の好業績につながっていたということのようです。

この事例から学べることは、チームメンバーが貢献の意識と協働を実践していかないと好業績チームを継続できないということです。

好業績チームにはひとりひとりの心理的資本を豊かにすることから

ひとりひとりが、揺らぐことのない自信を持ち、しっかりやるべきことを見定め、達成すべき道のりを柔軟に描き、行動し、メンバーとの信頼関係の下、リスクに対する挑戦やポジティブな思考でリフレイミングしながら進むことができれば、好業績チームが構成しやすくなります。
少なくともそのチームのマネージメントする人がこのような人材であれば、チームの課題に対して前向きに関わり、チームを鼓舞することができるのです。

このような人材要件のベースとなるのが、心理的資本です。
心理的資本は「やり遂げる自信、目標達成に自律的に行動する心のエンジン」であり、測ることも開発することも可能です。

心理的資本では、「主体的な役割外の働き・協働」「個人の生産性・業績」に正の相関があるというエビデンスが出ています。先ほどの好業績チームのために貢献していた人はまさしく心理的資本が豊かだった人と言えるのではないでしょうか。

心理的資本はスキルとして身に着けることができます。多くのかたに取り入れていただきたいと思います。

当社では、心理的資本を開発する介入法(ガイディング)を体系化しています。

新規事業をうまく立ち上げるには

イノベーションを起こさねば、と多くの大企業で躍起になっていますが、その際にチームづくりも経営側は考えてほしいものです。

日本の大企業では研究開発部門が新しい事業の芽を見出そうとしても、なかなか事業予算がつきにくいということをよく聞きます。

要するにその成果がどれほどの事業になるのか、明確にならないと思い切った予算がつかないというのです。
たしかに海のものとも山のものともわからないものに、お金は出しにくいこともわかりますが、研究開発にこそイノベーションにつながると考えれば、最初から事業部門や経営陣とのチームを組んでやっていかないと、結果が出てから事業化を考えるなどナンセンスだと思います。チームという考え方は、各部門でサイロ化するのではなく、目的にそった組み方を柔軟にしないといけないですね。

もうひとつ、大企業あるあるのチームづくりは、新規事業の展開で、どうビジネスが変化しているかわからないのに、最初から複数の機能別担当組織をつくっているケースです。
新規事業を広めるには最小人数でチームをつくり、そのチームが商品開発、マーケティング、営業まで一気通貫でやりながら、トライアンドエラーを繰り返しながら、成功のサイクルを作ったうえで、役割を分けて担当をつけていくほうが現実的です。
ひと昔前のように、機能別担当組織を作ったからといって簡単に売上をあげられる時代ではありません。
チームづくりこそ、経営の妙ですよね。

石見一女

石見一女

Be&Do代表取締役/組織・人材活性化コンサルティング会社の共同経営を経て、人と組織の活性化研究会(APO研)を設立運営。「個人と組織のイキイキ」をライフワークとし、働く人のキャリアと組織活性化について研究活動を継続。『なぜあの人は「イキイキ」としているのか』第1章30歳はきちんと落ち込め執筆、プレジデント社,2006年。

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