リアルルーキーズ!?10年連続初戦敗退からの下克上!~甲子園出場の白山高校に学ぶ

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記録的な猛暑が続く2018年夏。全国高校野球選手権大会は100回の記念大会。どの出場高校チームも、各地で激闘を制して甲子園で行われる全国大会に出場しています。

この年、地方大会を制して甲子園に初出場を果たしたチームが注目されました。
三重県代表の県立白山高校です。出場を決めた際には、情報番組をはじめ様々なメディアでその経緯が紹介されました。

注目をされたポイントは、

  • 現在の監督が着任した当時は部員5人からのスタート
  • 県大会10年連続初戦敗退から着実に力をつけて2017年は3回戦、2018年ついに優勝
  • 弱小野球部が優勝候補、甲子園常連校などを破っての下克上

という点です。

部員5名という点や、当初は大会に退部した生徒を説得して復帰してもらったり他校と連合チームで出場したり、大会前の壮行会では生徒から「どうせコールド負けだろう」といった心ない野次が飛んだそうです。そんな状況から、監督の熱意と、着実なチームの成長などがから「リアルルーキーズ(※)」とも呼ばれています。

※ルーキーズ(ROOKIES)は、森田まさのり作の高校野球を題材とした漫画作品で、実写ドラマ・映画化もされた。不良の巣窟となっていた野球部が、新任の教師が顧問となり、甲子園を目指し再建を果たしていく話。

高校球児たちのがんばりによる純粋なドラマとしても十分にすごいエピソードですが、ビジネスの現場でも活かせる点はないか考察します。

部員5名からのスタートはグラウンドの草むしりから

列車の本数は2時間に1本、山と田畑に囲まれた白山高校に、野球部監督として6年前に着任したのは東拓司監督。大阪体育大学時代、元メジャーリーガーの上原浩治投手とプレーしたこともある点や、決して野球でエリートというわけではない背景から「雑草魂」と表現されることも。

6年前、部員は5名、野球部が使用するグラウンドには雑草が生えっぱなしで、野球ができる状態ではなかったそうです。チーム改革はまず、グラウンドの草むしりからスタートします。自分たちが練習するためのグラウンドを一から整備したのです。

監督はここで一つの環境の強みを発見します。それはグラウンドが実は甲子園球場より広いということです。そこで、グラウンドに甲子園のフェンスと同じ位置にポールを立てて、フェンスをめがけて打撃練習を徹底して行いました。

自分たちが置かれている環境から、何を強みにすると良いのかを考えて実行したと言えるのではないでしょうか。もしグラウンドがとても狭かったのなら、機動力・走塁技術を徹底して鍛えるようなアプローチだったかもしれません。

もう一つ大切なことは、やはり地道で当たり前のことだけど、直接的にトレーニングにもならないかもしれないけれど、草むしりを監督や選手たちが一生懸命やることからスタートしたことです。考えてみてください、この部員数で甲子園より広いグラウンドです。みんなで草むしりを終えたときの達成感はひとしおだったでしょう!

目標のためにやることを明確化

甲子園より広いグラウンド、甲子園を意識したポールやフェンスの位置。フリー打撃練習はそこをめがけて打つ。おのずと目標として「甲子園出場」を意識しはじめるでしょう。

金属バットではなく、練習用の木製バットでパワーをつけることはよくやる練習法。それをさらに竹バットに変えて、芯でとらえる練習を徹底して行いました。(竹製バットは芯が狭いので、とらえないと打球がとばない)
また、遠くへ飛ばすことができるスイングのために、スローボールを外野に向かって打ち返すという練習も重ねたそうです。冬には、毎日1時間半の筋力トレーニングを行いパワーをつけました。

自分たちが何をするのが目標達成のための最短距離かを考え、日々のトレーニングに落とし込み、それを徹底していく。これはスポーツのみならず、どのような場面でも有効でしょう。だから目標の明確化をすることと、そのための日々の行動まで落とし込むことが重要なのです。

そして監督が徹底したことが、練習試合。県内外の高校、時には強豪校も相手に年間150試合以上の練習試合を、エアコンのきかないマイクロバスを監督自ら運転して移動したそうです。

ファーストステップとして基礎力をつけるトレーニングを徹底したら、やはり実戦(実践)を積み重ねるのがセカンドステップです。年間150試合以上というのは、ほぼ試合をしていたということ。その交渉や日程調整はかなり大変だったのではないでしょうか。
ただ、徹底的に実戦経験を積むことは、失敗もたくさんすることになりますし、それだけ学びも多いものです。こういうときはどうすれば良いか、何が足りないのかも明確になりますし、何よりいわゆる実践感覚という経験が身に付きます。

  • 目標を明確にすること
  • 日々の行動目標にまで落とし込むこと
  • 実践(実戦)を繰り返し、ふりかえること

当たり前のようで、このことの繰り返しが重要なのです。

ひとりの頑張りは誰かの頑張りにつながる

野球部の部長(いわゆる顧問的な立場)は、川本牧子先生。家庭科の教師だそうです。

川本部長は、小学生時代に野球、中学時代はソフトボール部。高校時代は野球部のマネージャーを希望するものの、募集がなかったそうです。
今でこそ野球部に女子部員がいることも珍しくなくなってきている(まだまだとは思いますが)と思いますが、ここまで野球に関わりたい!と行動されている点から、相当な根っからの野球好きなのでしょう!

白山高校では、部長として、備品の調達や、部の経理、書類作成、選手たちのお世話など、献身的に選手たちを支えている。

小学生のころに野球をしていた川本牧子部長(40)は、甲子園に立つことをずっと夢見てきた。「顧問としてなら女性でも甲子園の土を踏めるかもしれない」と選手らに伝えると、「僕たちが先生を甲子園に連れて行きます」。言葉が現実となり、川本部長は「やっと来られた。甲子園のベンチってすごく低いんですね」と満面の笑みを見せた。

グラウンドに入った選手らは守備位置の確認をしたり、打席でバットを振ったりして夢の舞台の感触を確かめた。

引用:背高い…他校に驚く白山 女性部長「甲子園ベンチ低い」

選手たちも、そんな川本部長のがんばりや、本当は野球をやりたかったという想いなどをくみ取り、自分たちが甲子園に連れていくという強い想いが引き出されたでしょう。

「あの人ががんばっているんだから、自分もがんばろう!」という感覚が生れるのです。これは誰かのがんばりが見えることで、自分もがんばろうと思える“自己効力感”のひとつです。

また、さらに地域の住民たちも白山高校野球部を応援するようになります。
白山高校の生徒の進路は、進学よりも就職が多いことから、学校周辺で様々な実習に参加しているそうで、それも地域との絆を深めるきっかけになっているそう。
キャプテンをつとめる辻選手も、ガソリンスタンドで実習を積んでいるそうです。

「息子の甲子園と同じくらいうれしい」周辺の
商店も甲子園出場を伝える号外を店頭に貼り、祝福ムード一色だ。

(中略)

辻宏樹主将(3年)は、学校近くのガソリンスタンドで実習に励む。店長の大西康之さん(58)は「まじめでシャイな子。さぼっているのを見たことがない」。青いつなぎ姿で、車の洗浄や側溝の掃除に取り組み、大きな声で「よろしくお願いします!」とあいさつしてくれるという。

大西さんも白山高OBだ。6月には東監督から筋力強化用の古タイヤを頼まれ、6トントラックのタイヤ10本を寄付した。

引用:ほぼ山の町・白山、甲子園「涙出る」 主将はGSで実習

地域の人々にも見守られ、本当に全員の地道ながんばりでつかんだ甲子園出場!そのひたむきながんばりが、地域の人々の心もつかんでいったことは間違いありませんね。

まとめ

甲子園に出場するチームも、地方大会で夏を終えたチームも、どのチームにもきっとドラマがあります。目標の目指し方は様々です。今回のケースでは、

  • 地道な基礎的なことからみんなで取り組んだこと
  • 環境の特性から強みを育てていったこと
  • 目標を明確にすること
  • 日々の行動目標にまで落とし込むこと
  • 実践(実戦)を繰り返し、ふりかえること
  • ひとりひとりの頑張りから、励まし合いが周囲に広がっていったこと

以上のようなことを学んだ気がします。

ここで触れた内容は、マスコミやインターネットニュースなどの報道や取材から聞こえてくる話から、考察したに過ぎません。しかしながら、それぞれの情報からうかがうことができる事実は変わりありません。
そこからビジネスの現場でも、意識できそうなことを考察・解釈をしてみました。

皆さんはどのようなことを、白山高校の例から感じられたでしょうか。ぜひ、お聞かせください!

橋本豊輝

橋本豊輝

株式会社Be&Do 取締役 COO/日本心理的資本協会 事務局担当理事。PsyCap Master® Exsecutive Guide。組織活性化プログラムの開発・提供や、人材育成サービスの開発、ツールの設計に携わる。企業の管理職や従業員など働く人のWellbeingをサポートする外部メンターとしても活動中。心理的資本を高める手法を追究している。著書に『心理的資本をマネジメントに活かす』(共著)中央経済社,2023年がある。

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