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行動には「Be」と「Do」の両方が必要
行動を起こすためには、「Be」と「Do」の両方が大切だと、私は考えています。
「Be」とは、在り方・価値観・信念(内面的な状態)のこと。「Do」とは、やり方・行動(外面的な行動)のこと。どちらか一方だけではなく、この二つが揃ってこそ、人は本来の潜在力を発揮し、しなやかに前に進むことができるのではないでしょうか。
この関係を、自転車でイメージしてみてください。「Do」は進む方向を決める前輪、「Be」は進む力を生み、安定させる後輪です。両輪にしっかりと空気が入り、回転するからこそ、自転車は軽やかに・安定して・スピーディーに走ることができますよね。
職場では「Do」ばかりが語られている
ところが、私たちの職場や日常を振り返ってみると、「Do」ばかりが語られ、「Be」が置き去りになっている場面が少なくありません。
例えば会社のプロジェクトでは、「今回この取り組みをやります」「あなたはこの業務を担当してください」「方法を相談しましょう」といった話が中心になります。これらはすべて「Do」の話です。
もちろん、前に進むために「Do」は欠かせません。しかし、「Be」についても十分に検討できているでしょうか。
・「なぜ、私たちはこれをやるのか」
・「自分たちは達成してどうなりたいのか。なにを感じたいのか」
・「達成することで、誰にどんなポジティブな変化やメリットが生まれるのか」
・「行動を起こすための自信は持てているか」
こうした「Be」にも目を向けることで、両輪の力で進むことができるのです。
「Do」だけで走ることのリスク
「Do」だけで走る状態は、いわば自転車の後輪の空気が抜けたまま走っているようなものです。ハンドル操作は重く、段差やカーブで転びやすくなり、場合によっては大きな事故につながるリスクも高まります。しなやかに前に進むことが難しくなります。
『「Be」なんて考えなくても、今まで問題なくやれてきた』と思う方もいるかもしれません。ただそれは、空気が少ないタイヤで走ることに慣れてしまっているだけです。その状態が“普通”になっているのです。
「言われたからやる」「自分の役割だからやる」「プレッシャーがあるからやる」。自分の内側にある「Be」を持たないままに走り続けていると、一見うまく回っているように見えても、強い負荷がかかったときや、長期的なストレスが続いたとき、あるいは突発的な判断が求められたときに、柔軟に対応したり、前向きに乗り越えたりすることが難しくなります。前輪(Do)の力だけでは、いずれ限界が来るからです。無理を重ねれば、最悪の場合、心がポキッと折れてしまうかもしれません。
私たちは「Be」を忘れていないか
思い返してみてください。
子どもの頃は、「楽しい」「やってみたい」という気持ちを素直に感じ、それを原動力に行動していたのではないでしょうか。豊かな「Be」があるから、自ら工夫し、試し、学び、成長するのです。私たちは大人になるにつれて、いつの間にか、「Be」と「Do」両輪で進むという感覚を失ってしまっているのかもしれません。

リーダーの立場から見た「Be」と「Do」
ここで少し視点を変え、経営や上司といったリーダーの立場から考えてみましょう。
いまのビジネス環境は、不確実性が高く、変化のスピードも速い時代です。成功パターンを簡単に見いだせる状況ではありません。
そんな中で、リーダーが決めたハンドル操作で「Do」を握り、現場の人を前に進ませ続けることには限界があります。実際に走っているのは、最前線にいる社員です。社員が自ら小回りに加速していける状態をつくらなければ、持続的な成果と人の成長にはつながりません。たとえ短期的に成果が出たとしても、プレッシャーによって行動を掌握しようとすれば、離職という形で歪みが表面化するでしょう。

高い報酬によって社員の心のバランスが保たれているケースもあるかもしれません。しかしそれは「Be」の力を十分に活かせているとは言えず、軽やかでスピーディーな前進とは別のものです。
これからのリーダーの役割は、すべての「Do」を決めることではなく、メンバー一人ひとりが自分の豊かな「Be」を持って、力強く走れる環境を整えることなのではないでしょうか。
BeとDoの両輪で考えるとは?(社内エピソード)
私たちの会社の社名が「Be & Do」であるように、私たちはこの考え方をとても大切にしています。
ここで、「Be」と「Do」の両方で考えることの大切さに気付いた、社内でのエピソードを一つご紹介します。
私は「このセミナーを定期的に続ければ、さらに成果につながるのでは?」と考えました。しかし上司は、「同じことを繰り返すのは苦手だし、正直あまり楽しくない」と言ったのです。さらに社長も「それ、分かる!」と同意しました。
当時、転職して間もなかった私は、このやりとりに衝撃を受けました。「もったいない!」と。
しかし改めて考えてみると、確かに、セミナーを継続して短期的に成果が出たとしても、実施する側が楽しめていなければ、内容は磨かれませんし、いきいきと語ることもできません。その空気は受け手にも伝わり、結果としてセミナーの魅力や満足度、成果は徐々に下がっていくでしょう。
両輪がそろうと、仕事はもっと楽しい
最後に、このコラムを読んでくださった方にお伝えしたいことがあります。
「Be」と「Do」の両輪を持って取り組む仕事やプロジェクトは、本来、とても楽しいものだということです。
何かに取り組もうとするとき、誰かとプロジェクトを進めているとき、あるいはリーダーとして仕事やタスクを任せようとしているとき。ぜひ「Be」にも目を向けてみてください。そして、ときどき「Be」を振り返ってみてください。タイヤと同じで、放っておくと、いつの間にか空気は抜けてしまうものですよ。
このコラムが、誰かがイキイキと前に進むきっかけになれば、とても嬉しく思います。
ご案内:Beの支援のためのヒント
「心理的資本」という、心の原動力をさす概念があります。
心理的資本を構成する4要素(HERO)は、まさに「Be」を考えるヒントとなります。
・Hope(意志と経路の力):「私は目標を達成できる人である」という自己認識
・Efficacy(自信と信頼の力):「私は困難を乗り越えられる人である」という自信
・Resilience(乗り越える力):「私は逆境から学び成長する人である」という信念
・Optimism(柔軟な楽観力):「私は未来に対して前向きな人である」という姿勢
心理的資本開発手法(ガイディング)は、表面的なDoの指導(単なるスキル指導)ではなく、その根底にあるBeの状態から働きかけるアプローチです。表面的な行動変容ではなく、本質的な在り方の変容を通じた成長を支援します。
心理的資本については、書籍「心理的資本をマネジメントに活かす」で詳しく解説しています。また、私たちは心理的資本開発の指導士となる認定講座(PsyCap Master認定講座)を運営しています。
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