学習性無力感を打開する唯一の方法

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学習性無力感とは

学習性無力感」という言葉、ご存じでしょうか。
学習性無力感とは、長期間、苦痛やストレスにさらされたことで、どんな努力をしても回避されないと学習してしまった状態、すなわちあきらめてしまった状態です。

学習性無力感に陥ると、行動を起こすことが無意味に感じてしまうため、個人にとっても組織にとっても決して良いことはありません。
なんとか、脱出したいものですね。

水槽の魚のメタファー

学習性無力感をあらわした、水槽の魚のメタファーというものがあります。
水槽の中で泳ぐ1匹の魚。これまでは普段通り、エサをあげていました。

そこで、水槽に透明な仕切りを入れて、アクリル板の反対側にエサを入れます。魚がいる側にはエサが与えられません。青い魚はエサを食べようとなんども仕切りにぶつかりますが、エサを食べられません。

1匹の魚が入った水槽にアクリル板を入れ、エサをアクリル板の反対側に入れている様子。

この期間が続いたのち、魚のエリアにエサを投入しても、魚はエサを食べません。
自分はエサを食べられないのだと学習してしまったのです。これが学習性無力感です。

失敗が許されない風土は学習性無力感が蔓延している

この話は日常的に起こっている出来事です。

例えば、失敗が許されない風土の会社など、学習性無力感が蔓延しています。
失敗が許されないとは、「ミスすると糾弾される」「降格される」「バカにされる」などミスや失敗に対して、過剰にプレッシャーがかかる状況です。
これでは、チャレンジしようという気運は生まれないですよね。
特に新しい取り組みなどは、失敗するのが当たり前。その失敗を糧に挑戦し続けてこそブレイクスルーが生まれることは頭ではわかっていることなのに、組織になるとそれができないのは妙なものです。

さて、長期間、失敗を許さない、ミスを糾弾することが繰り返されている組織では、「言われたことをやっているだけのほうが安全」「目立たないようにしないと危険」「上司に気に入られることだけをしよう」という思考をとる人が大半を占めてしまいます。

なんと情けないことか、と評論するのは簡単ですが、いざ、自分がそのような環境におかれたとき、自分のリスクを顧みず、会社のために挑戦しようという人はいったいどのくらいいるでしょうか。

私は組織の学習性無力感を嘆くのであれば、経営トップから日頃のマネジメントのあり方を正していただきたいと思います。
特に気を付けてほしいのは、自分の直下の人の人選です。

私は多くの経営者の方と直にお話する機会がよくありますが、経営者ご自身は挑戦意欲に欠ける組織風土を嘆いています。
よく「経営が変わらないと現場はよくならない」と聞きますが、トップは変革を望んでいることが多いのです。

なのになぜ、相変わらず失敗を許さない風土を変えていけないのでしょうか。
それこそ「風土」というだけあって、長年蓄積された考え方を変えるのは相当大変です。

経営者は自分の直下の人の人選が大事と言ったのは、トップがいかに変革や挑戦を望もうとも、直下の人が旧態依然であれば、結果的にはなにも変わりません。
変革も挑戦も絵にかいた餅にしかなっていないのです。

組織の風土を真剣に変えたいのであれば、経営者自ら改革の旗印をあげて、それに即した取り組みを率先してやっていただきたいと思います。

学習性無力感を打開する方法

さて、学習性無力感を打開する方法ですが、「水槽の魚のメタファー」にヒントがあります。
それは別の魚を入れてエサを食べる様子を見ると、別の魚につられてエサを食べるようになる、ということです。新たに投入された魚は平気でエサを食べます。それを見た魚は「自分も食べられる」と理解して食べることができたのです。

このことは「代理体験」といい、「あの人ができたのであれば、私もできる」という他者からの学びです。学習性無力感を打開するにはモデルとなる人やチームを生み出すことが求められます。
そのためには、経営側がやるべきことは、小さくてもいいので成功事例をつくることです。
その成功事例をつくるために、これまでの常識を超えた権限を与えたチームをつくる必要があります。

それと重要なことは、その人たちのメンタリティです。
心理的資本は「目標に向かって自律的にやり遂げる心のエネルギー」という経営学の概念です。いかにスキルがあっても、「どうせやってもムダ」という心のハードルを超えていくには、心理的資本の開発が欠かせません。
(心理的資本にご興味をお持ちの方はこちらもご覧ください)

水槽の魚のメタファーにある「代理体験」とは心理的資本のEfficacy(自信と信頼の力)の開発の要素です。
Efficacyの開発には代理体験の他に、「達成体験」「社会的説得(ポジティブフィードバック)」「情動的喚起(心身がワクワク)」が効果的と言われています。どれも学習性無力感から脱出する要素になると考えられます。

心理的資本は測ることも開発することも可能です。
心理的資本はHEROとも呼ばれ4つの概念から構成されています。
これらを高める介入法をガイディングといい、外部から1on1形式でガイディングする方法や自分自身でコントロールするセルフガイディングがあります。

学習性無力感が蔓延する組織は、ミスを隠ぺいする恐れも出てきます。これは心理的安全性が低い職場とも言えます。Be&Doでは、管理職の心理的資本を高めるガイディングサービス(CG1)で職場の心理的安全性向上の成果が出ました。これは後日、ご紹介します。

風土改革を実現したい会社組織には、ぜひ心理的資本への関心を高めていただきたいと思います。

尚、学習性無力感を克服する方法をAI(Gemini)に聞きました。

学習性無力感の克服方法
学習性無力感を克服するには、以下のような方法があります。

・小さな成功体験を積み重ねる
・自分の行動が結果に結びついていることを実感する
・自分で選択したり、コントロールできる範囲を広げる
・ストレスに対処する方法を身につける
・周囲の人に助けを求める
・学習性無力感は、自分一人で抱え込まず、周囲の人に助けを求めることも大切です。

これらはすべて心理的資本の開発の手法で説明できます。
心理的資本にご注目ください。

 

石見一女

石見一女

Be&Do代表取締役/組織・人材活性化コンサルティング会社の共同経営を経て、人と組織の活性化研究会(APO研)を設立運営。「個人と組織のイキイキ」をライフワークとし、働く人のキャリアと組織活性化について研究活動を継続。『なぜあの人は「イキイキ」としているのか』第1章30歳はきちんと落ち込め執筆、プレジデント社,2006年。

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