突然ですが、みなさんは「自分のこと」をどれくらい客観的に理解できていますか?
「自己分析」というと、多くの方が就職活動の時を思い出し、「なんだか懐かしい」「もう終わったこと」と感じるかもしれません。 しかし、社会人として経験を積み、中堅と呼ばれるようになる30代中盤の今だからこそ、改めて「仕事上の自分」について深く知ることが、非常に重要だと感じています。
なぜなら、私たちは一人で仕事をしているわけではないからです。 良くも悪くも、自分自身の思考や行動の「クセ」は、知らず知らずのうちに周囲のメンバーやチームワーク全体に影響を与えています。
今回は、「自分を理解することの重要性」と、そこから一歩進んだ「他者を理解することの有用性」について、考察してみたいと思います。
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「性格」ではなく「行動のクセ」を知る
自己分析には様々なツールがありますが、ここでは私たちが活用しているタイプ診断「BeingDoingチェック(以降、BDチェック)」という分析ツール を例にご紹介します。
これは「性格診断」とは少し異なり、「人がどのような状況でどのような行動を取りやすいか」という「行動性向」「思考特性」を分析するものです。大切なのは、良い・悪いではなく、あくまで「状況に応じた行動パターン・思考パターンに焦点を当てている」 点です。
BDチェックでは、人の行動性向を大きく4つのタイプに分類します。
- Be-Attack (BA): 「楽しい」が原動力。アイデア豊富で瞬発力があるタイプ。
- Be-Defense (BD): 「ありがとう(感謝)」が原動力。協調性があり、丁寧・着実なタイプ。
- Do-Attack (DA): 「使命感」が原動力。推進力があり、信念で引っ張るタイプ。
- Do-Defense (DD): 「信用」が原動力。堅実性があり、実直・慎重に実行するタイプ。
みなさんは、ご自身がどのタイプに近いか、想像がつきますか?
自己理解とは「自分のトリセツ」を持つこと
こうした分析の目的は、「私は〇〇タイプだ」と自分にレッテルを貼ることではありません。 自分の「クセ」を知り、「自分の取り扱い説明書(トリセツ)」を手に入れることにあります。
例えば、私自身(小西)の結果は「Do-Defense(DD)」タイプ でした。 「信用」を原動力 とし、「実直慎重に実行する」 傾向があります。
確かに、新しいことを始める時も、鼻から否定はしませんが、本心では「本当に大丈夫か?」「前例は?」「リスクは?」と、つい石橋を叩いてしまう(Defense)傾向があります。ですが、一度「これはやるべきだ」「これが正しい」という信念(Do)を持つと、最後までやり遂げようとする「堅実性」 や「意志力」 が自分の強みだと自負しています。
さらに、BDチェックには「論理型(R型)」か「感覚型(K型)」かという別の軸もあります。 R型は「物事を論理立てて理解」 し、「感情よりも客観的な分析を基準に」 おきます。K型は「感情や感性的に理解」 し、「直感的に感じた好き嫌いを基準に」 おきます。
私は、この「論理型(R型)」 でもあります。 つまり、「実直慎重(DD)」でありながら、「客観的・論理的(R型)」に物事を判断しようとするクセがある、ということです。

自分の「状態」が、チームへの影響を決める
この「DDタイプ × 論理型」というトリセツを持つ私が、チームにどう影響するでしょうか?
ここで重要になるのが、「心理的資本(PsyCap)」、いわば「心のエネルギー」の状態です。 私たちの行動性向は、それ自体に良い悪いはありません。しかし、心のエネルギー状態によって、そのタイプのポジティブな面が強く出るか、ネガティブな面が強く出るかが変わってしまうのです。
【心理的資本が高い(=心に余裕がある)時の私】 DDタイプのポジティブな面「堅実さ」「意志力」 が発揮されます。 チームの中では、「あの人に任せておけば、しっかり最後までやり遂げてくれる」「論理的に(R型)リスクを洗い出し、堅実に(DD)プロジェクトを守ってくれる」という「信用」 に足る存在になれているかもしれません。
【心理的資本が低い(=ストレスを感じている)時の私】 DDタイプのネガティブな面「守旧的」「頑固」 が顔を出します。 例えば、新しいアイデアが出た時。 「論理的に(R型)考えて、その前例のない(DD)やり方はリスクが高い」と、客観的な分析を盾にして、変化に「反抗的」 になってしまう可能性があります。
…こうして整理すると、少し耳が痛いですね(苦笑)。
でも、これが「自己理解」の第一歩です。客観的な物差し(診断)をもって、 自分のタイプ(トリセツ)を理解していれば、「あ、今、私の心理的資本が下降傾向だから、頑固モードに入りかけてる」と、自分自身で“気づく”ことができます。 その“気づき”こそが、自分の行動を客観視し、チームへのネガティブな影響を未然に防ぐ鍵となります。
他者理解とは「チームの可能性」を広げること
そして、自己理解が深まると、自然と「他者理解」の重要性も見えてきます。 チームには当然、自分とは全く違うタイプの上司、部下、同僚がいます。
その「違い」を、私たちはどう捉えているでしょうか? 「あの人は感覚的(K型)で、論理(R型)が通じない」 「あの人はアイデア(BA)ばかりで、実行(DD)が伴わない」 …このように、「違い=やりにくさ」と捉えてしまうのは、非常にもったいないことです。
私(DD × 論理型)のチームにも、当然ながら違うタイプのメンバーがいます。 例えば、私は「論理」や「客観性」 を重視するあまり、文章を書くとどうしても「共感性」が低く、硬い内容になりがちです。開き直るわけではありませんが、これは私の苦手な部分です。
そんな時、私は「感覚型(K型)」 で、人の感情を汲み取るのが得意なメンバーに、「この文章、もっと読む人の心に響くように手直ししてくれない?」と素直にお願いすることにしています。 すると、驚くほど文章が柔らかく、魅力的になって返ってくる。まさに「助かります!」という瞬間です。
これは、相手のタイプ(強み)を「感覚的で理解できない」と切り捨てるのではなく、「自分にはない“共感性”という武器を持った人だ」と理解し、リスペクトしているからこそできる連携です。
自分と違うタイプは、対立の火種ではありません。 チームの足りない部分を補い合い、1+1を3にも5にもする「補完関係」 の源泉なのです。

これからのリーダーシップとチームワーク
30代中盤を迎え、自分自身もチームの中で中核を担う役割が増えてきました。 今、私たちが身につけるべきリーダーシップとは、強力なカリスマ性でぐいぐい引っ張る(DAタイプ的 な)ことだけではないはずです。
まずは自分自身の「トリセツ」を深く理解し、常にポジティブな影響を与えられるようセルフマネジメントすること。 そして、メンバー一人ひとりの「違い(タイプ)」を強みとして尊重し、その力が最大限発揮されるよう、補完し合えるチームワークをデザインすること。
「自分を知り、他者を活かす」。 言葉にするとシンプルですが、これこそが、多様な人材が集まる現代の組織において、最も本質的で、強力な武器になるのではないでしょうか。
…と、ここまで「自己理解」と「他者理解」について熱く語ってまいりました!
このタイプは人材育成にも大きく影響をします。
実は、今回お話ししたようなタイプを参考にしながら、 一人ひとりに”刺さる育成”を考えるというテーマで、セミナーに登壇させていただくことになりました。
- 「1on1を重ねても、部下の本音や動機が見えない」
- 「良かれと思って指導しても、期待する行動が変わらない」
- 「多様化するメンバー(Z世代など)に、どう接すれば響くのか分からない」
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そんなジレンマを抱える方にぜひご参加いただけると嬉しいです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

