昨今よく耳にする「退職代行」という言葉。
今年もつい先日、G.W明けの依頼数が過去最高数という記事を目にした。
今回は、新入社員が退職代行に依頼しない環境づくりをテーマに心理的資本の観点から考えてみよう。
学生時代を経て新社会人として大きく環境が変化するこの時期は、人生においても大きな節目だ。そして心理的資本においては、Efficacy(エフィカシー)が大きく下がる時期でもある。
なぜなら、所属する環境が変わると未経験である新しい環境では、自信が失われエフィカシーは著しく低下するからだ。
Efficacy: Efficacy(エフィカシー)とは、心理的資本において「自信と信頼の力」と言い換えられ、自分ならできるという自信のことを指す。
大型連休の落とし穴
エフィカシーが下がった新入社員は毎日不安の中で耐えている。
初めての環境に身をおかれ不安なだけでなく、覚えることも多い上に人間関係の構築もゼロからしなければならない。そうして心身ともに疲れきっているところに大型連休が用意されている。
会社はもちろん、はたまた本人までもが、疲れきった心身を連休でリフレッシュできればまた新たな気持ちで仕事ができるだろうと理想を描いて連休に突入するだろう。
しかしそううまくはいかない。
環境が変わりエフィカシーがさがっている新入社員は、G.Wで慣れた環境に戻ることで、緊張から解き放たれ、怒涛のように過ぎた1ケ月ほどの社会経験を糧にすることもできず、社会人として何かに挑戦する気力もなく、もちろん努力することもできず、これからも待ち受けるであろう困難にも耐えきれず「よし、辞めよう」となるのだ。
これは本人にとっても思ってもいない心の展開なのかもしれない。
新入社員にとってこの時期に大型連休があること自体、退職の意向を促進することにほかならない。
しかし、もしエフィカシーを高く保ち大型連休を迎えることができていたら?
大型連休は、本当の意味で充実したリフレッシュ休暇となり、休暇を満喫したあとは、やる気に満ちてイキイキと仕事に向かうことができるだろう。まさに理想の大型連休のあり方である。
このようにエフィカシーが高いか低いかによって大型連休が与える影響は大きく変わってくる。
危うく脆い一方で・・・
エフィカシーは危うく脆い。
それは、上でも示したとおり、環境に依存する一時的なものとしての見方ができてしまうことからも明らかである。
しかし、幸いなことにエフィカシーは行動、実践により開発され、常に改善し続けることができる、そして継続することで際限なく強化することができるという強い側面がある。
そして何より、エフィカシーは心理的資本における基礎となる概念であり、他要素への影響も大きい。
「行動を実際に起こすこと」が心理的資本の開発の根本にはあるのでエフィカシーは、優先して開発する必要があり、開発方法を身につけると可能性は無限に広がるとも言えるのだ。
エフィカシーの開発のための一歩
この時期の新入社員に必要なエフィカシーの開発方法は、達成体験をいかに積み重ねるかであると考える。
実践や経験を積み重ねて成功体験を経験させることは、自信につながりエフィカシーを高めることができるからだ。
自信をなくしている環境での成功体験は心理的にもより大きくプラスの影響を与えるだろう。
小さな行動でも良いので、できたことに焦点をあてて褒めたり、ポジティブフィードバックをして、自信をつけさせることが大事だ。
これにより、自分がやったことへ他者から感謝されていると感じることができる。
褒められることもポジティブなフィードバックも、自分がやったことに対するご褒美だと感じることができるのだ。
人は一般的に、怒られるより褒められる方が成長する。
自分は必要とされているという存在意義を得ることができると、「この会社で、今よりももっと、みんなの役に立ちたい!」とおのずと思うものだろう。
そういったサイクルが上手くまわりはじめると、挑戦する力がわき、ちょっと難しいぞと思うことにもチャレンジができるようになる。それに伴い、自ら目標を見つけることができ、その目標のために自ら行動する力を持つことができるようになる。そして、それらの積み重ねを通して失敗も糧にできるたくましさをもち、結果的にエフィカシーが高まっていく。
高まったエフィカシーは、心理的資本の他の要素にも良い影響を与え、結果的には組織全体に良い影響を与えるだろう。
だからこそ、新入社員になによりも優先してすべき研修は、ビジネスマナー研修でもなく、OJTでもなく、心理的資本(エフィカシー)を開発させる環境をつくることこそ、きたるべきG.Wに悲劇を防ぐ唯一の方法ではないだろうか。
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