自信を高める「代理体験」の力を侮ってはマネジメントの損失である

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自信をつけたい、あるいは同僚に自信を持ってほしいと考える人は多いです。そのために必要なことは、「達成体験」であると認識している人は多いです。しかしもう一つ「代理体験」と呼ばれる達成体験に次いでインパクトがある方法を、知らない人は多いと感じています。

「代理体験」の効能を、どうやって職場のマネジメントで活かすことができるのでしょうか。

代理体験とは?

代理体験とは、他者からの刺激によって、「あの人にできるなら自分にもできる」という感覚を得て、刺激を受けることです。代理体験は、自信(自己効力感)を持つための重要な要因の一つであると、経営学において明らかになっています。

2023年春に開催された野球世界大会(WBC)での、決勝直前の大谷翔平選手の有名なスピーチ「憧れるのは、やめましょう」は、まさに代理体験を生む言葉でした。チームメイトだったヌードバー選手は、「私たちと同じ国や環境で育った、ショウヘイは彼ら(メジャーリーガー)より上手い。簡単に言うと、多くの選手に『ショウヘイが言っているのだから、私たちはやれるに決まっている』という自信を与えてくれたと思う」と後日メディアで語っています。そこでチームが自信を持つことができたことが、アメリカ戦の勝利に繋がったことは間違いありません。

同僚同士のプロセスが共有が鍵

代理体験を生むために、チームマネジメントにどのような工夫が必要でしょうか?一つは、同僚同士のプロセスが共有できるているされていることです。どんな志を持っているか。どんな目標を立て、何を日々意識して取り組んでいるのか。どんなときに嬉しいのか。単なる業務内容では無く、広義の意味でプロセスが共有できていると、刺激を得ることが増え、より効果的です。

代理体験を避けてしまっている説?

このようなプロセス共有は、実際のところできていない組織が多いと感じます。なぜか。個人個人は、自信を持ちたいと思う人が多いはずなのに。
以下のような個人の感情が、組織のプロセス共有を阻んでいるのかも知れません。

・頑張ってる感、努力してる感を知られるのが恥ずかしい。茶化されたくない。
・目標を宣言したからには達成しないといけなくなる。ハードルを上げたくない。
・会社に評価のアピールしてると同僚に思われたくない。
・同僚を出し抜きたいから、彼らのモチベーションを刺激したくない。
・自分のノウハウを共有したくない。
・努力を見せずに成果を出すことのカッコよさ(美徳)を感じている

あくまで仮説ですが、思い当たることはありますでしょうか?
そういえば学生時代、「全然勉強してないわ〜」とクラスメイトを油断させて、実はめちゃめちゃ勉強してる人がいたような…(笑)。他にも、よくスポーツ等でこんなエピソードを聞いたことはありませんか?「あいつはみんなが見ていないところで、誰よりも素振りをしていた。」と語るコーチ。

しかし、自信がパフォーマンス発揮を促すのは周知の事実。代理体験の力を利用しないのは、もったいない!というのが、本コラムで私が伝えたいことです。

行動促進するリーダーは、チームに代理体験を波及させる

例えばリーダーのマネジメント。筆者は仕事柄、社内協働ツールの活用支援もしています。そこで色々なコミュニケーションの様子をウォッチしていて感じた、内発的な動機付けがうまいリーダーと、そうではないリーダーの違いは以下です。

動機付けがうまく、行動変容の支援ができるリーダー
まずは自分が率先して動き、手本を示します。そして、その動きをメンバーに見せます。「アクセスしました!」「システムを入力しました!」「使ってみて、こうでした!」などなど。リーダーが取り組んでる姿がメンバーの代理体験になり、メンバーも徐々に前向きに行動を起こすことができるようになります。即効性はないが、リーダーに追随していくイメージです。
動機付けがうまくないリーダー
管理/指示型です。メンバー視点から見て、そのリーダー自身が行動を起こしているのかどうかは伝わっていません。リーダーの動きがよく見えない。一時的には、メンバーが動きます。即効性があります。しかし動きが止まる。そのタイミングで、「アクセスできてませんね。やりましょう。」と投げかける。このループで、気づけば誰も動かなくなっている。というイメージです。

代理体験は、周囲に前向きな自信を生みます。コミュニケーションの様子を見ていると、大きな違いとして、メンバーが楽しそうか、楽しそうじゃないか。雰囲気に差が出ます。テキストベースだけど、漂う空気感が違います。このケースは社内協働ツール上の話ではありますが、リアルで行うマネジメントでも、同じことが言えるでしょう。

マネジメントに代理体験を生む工夫を

代理体験を生むマネジメントを現場で実践するには、どんなことがあるでしょうか。例えば、チーム内で成功体験や失敗体験を共有する機会をつくる 。その社員(あるいは自分)にとって、刺激を得られる近しい存在を見つける。などが考えられます。

当社の例になりますが、Be&Doでは2019年頃から毎週末、各社員が一週間の業務をポジティブに振り返り、互いに共有し合うミーティング、通称「チアアップミーティング」を行っています。一人一人が順番に、”今週の「嬉しかったこと」「うまくいったこと」「喜ばれたこと」「がんばったこと」”をシェアするミーティングです。上司も含む、社員全員参加で行っています。

参加しての私自身の実感として、同世代メンバーに「負けずに頑張ろう」と思えたり、上司を見て「走り続けていてすごいな」「自分にも頑張ればできるかも知れない」と感じたり、刺激を得ることができています。

※こちらのコラムもご参照ください。関心のある方は、ぜひご覧ください。

週の業務をただポジティブに振り返るミーティングを3年続けて実感したこと

さいごに

「代理体験」を侮ってはもったいない。代理体験の効能をマネジメントに活かし、メンバーが自信を持って行動を起こせるような支援を実践しましょう!

なお、人の目標達成へ向かう前向きなエネルギーを「心理的資本」といい、今経営学で注目されています。「自信」は、心理的資本を高めるための4つの要因の内の一つです。自信以外にも、さらに3つの観点からメンバーのパフォーマンス発揮を支援することができます。詳しく知りたいかたは、心理的資本の概要がわかるコラムをご覧ください。又は下記のフォームから資料のダウンロードも可能です。

本コラムが、自信を発揮するための具体的な手段を考えるきっかけになれば嬉しいです。

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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