ビジネス現場における心理的資本の「活用・実践・効果」の実例を知る

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人的資本経営のコアとなる「心理的資本」

心理的資本とは行動を起こすための前向きな心理的エネルギーです。米国ネブラスカ大学名誉教授で経営学の研究者としても知られるフレッド・ルーサンス氏を中心に2002年ごろに提唱された、ポジティブ心理学研究の流れを汲んだ概念です。

心理的資本は測定・開発が可能とされています。また、心理的資本は4つの構成要素があり、頭文字をとって「HERO(ヒーロー)」と呼ばれます。

人材を資本と捉えて経営に活かす「人的資本経営」が日本で注目されていますが、心理的資本は人的資本のコアの部分に当たるといえます。人的資本を宝の持ち腐れにせず、活かすためには、一人ひとりのマインドが大切。そのようなマインドを言語化してくれているのが心理的資本です。これから心理的資本への注目が高まっていくことが予想されます。

実務者によるビジネス現場での心理的資本の活用実例

心理的資本は新しい概念ですが、学術的な研究領域に留まらず、実務者による実際のビジネス現場での心理的資本の”活用”が進んでいます。これは、人や組織の心理的資本を高める手法(=ガイディング)のスキルを有する「日本心理的資本協会認定 PsyCap Master®(サイキャップマスター/心理的資本開発指導士)」の活躍が背景にあります。

2022年10月よりPsyCap Master®認定講座が開講され、総受講者は2023年11月現在で100名を超えました。以下に、心理的資本の活用・実践について、PsyCap Masterによる実例を現在進行形の取組みも含めご紹介いたします。

「努力すれば成長できるという自信」を新入社員に伝える(離職防止)

新入社員のマインドを高めるために、心理的資本の考え方を研修で活用した事例です。

所属企業で人事部長としてご活躍されている藤原さんは、「努力すれば成長できるという自信」を新入社員に持ってもらいたいが、そのようなマインドをうまく体系的に教えることが難しいと感じておられました。「従来の経験値的な採用や育成ではなく、科学的に再現性があって、かつ体系的に伝えられる方法」を探す中、心理的資本という考え方に出会い、PsyCap Master認定講座を受講されました。

藤原さんは新入社員研修としてレゴ®ブロックを積み上げる体験学習を実施し、課題の間に時間を設けて、新入社員に必要なマインドをHEROの概念を取り入れながら参加者に伝えました。「みんなの腹に落ちた」と手ごたえを実感されたそうです。実際、入社後の定着に繋がっています。

詳細はPsyCap Master認定者インタビュー、またはウェブセミナー(アーカイブ配信中)にてご確認頂くことができます。

メンバーの意欲を高める支援をリーダーの資質・力量だけに依存しない(リーダーシップ開発)

市場が成熟化し、変化が早く、簡単に正解を見いだせないビジネス環境である今、「人の潜在力をどう発揮させるか?」が企業に問われています。そこで鍵を握るのは、職場を任されているリーダーです。従来型のリーダーシップからの脱却が必要です。しかし、会社としての支援に試行錯誤されている企業は多いのではないでしょうか。

PsyCap Masterの吉田さんは、所属企業で「社員の意欲を高めるプロジェクトチームのリーダー」として活動されています。リーダーのスキルを高めるための共通の概念として、心理的資本やHEROのフレームワークを用いることができる可能性について受講インタビューでお話頂いています。以下に一部をご紹介します。

▼インタビュー抜粋
今までは、チームリーダーによってメンバーの意欲を高めるようなサポートに差がある状態でした。ただ、リーダーのスキルを高めるための共通の概念はなく、「Aさんだからできる」というような、リーダー自身の力量に依存してしまっている面がありました。リーダー層が共通認識として心理的資本の概念やガイディングを知っていれば、効果的なメンバー育成に活用できると思います。

例えば、心理的資本の構成要素であるHEROに基づいて、「Aさんはこんな状態だ」とリーダーが認識できれば、どういう点をこのメンバーにサポートしてあげたらいいのかがわかるようになってくると思います。

(中略)
プロジェクトチームとして、まずは心理的資本の概念やガイディングを組織の中で浸透させていきたいと考えています。まずはリーダー層に理解してもらえるように、ワークショップを企画中です。また、これから新たにリーダーになった社員に対しても、HEROを高めるにはどうしたらいいかを理解した上でチーム作りを進められるような状態にしていきたいです。「Aさんだからできる」ではなく、チームリーダー同士がお互いに人財育成で切磋琢磨できるような状態を目指します。

コミュニケーションの方法をアップデートする(コミュニケーション/対話スキル向上)

ここまで、社内の推進者としての心理的資本の活用をご紹介しました。ここからはやりとげる自信を高め、自律的な目標達成を促す(=心理的資本を高める)コミュニケーション手法である「ガイディング」の具体的な実践例について、一部をご紹介します。

なお、ガイディングは心理的資本の4つの構成要素である「HERO(ヒーロー)」のフレームワークを用います。手法の解説は以下のコラムをご参照ください。

PsyCap Masterの原さんは、学生社会課題プログラムのコーディネーターとして学生さんを支援されています。HEROのフレームワークを念頭に置いてコミュニケーションの取り方を工夫し、前向きに行動する後押しに活かされています。

▼インタビュー抜粋
学生社会課題プログラムはチームでの活動だったのですが、当初はチームメンバー同士で遠慮してしまっている面があったんです。そこで、メンバーにHopeの視点から「どんな状態を目指している?」「どうなっていると嬉しい?」という問いかけをして、一人ひとりに言語化してもらいました。そうすると、同じチームでも人によって目指すことに少しずつ違いがあるんだと気付き、互いへの理解が生まれてチームの一体感が高まるきっかけになりました。

また、計画通りに事が進まず、落ち込んで個人の行動が止まることもありましたが、Resilienceの視点から、「いやいやこんなもんだよ。」と伝えてその状態を本人に受け止めてもらった上で、目指したい目的・姿にもう一度立ち返ってもらうなど、乗り越えて活動を前に進めていく選択をするためのポジティブな思考のサポートをしました。

同じくPsyCap Masterの冨士原さんは、所属するチーム内のファシリテーションを円滑に進める際にガイディングを活用し、メンバーの意見が増えたことを実感されています。

▼インタビュー抜粋
チーム内のファシリテーションにも学んだことが役立っています。例えばなにか失敗したときも、そこで議論を終わらせてしまうのではなく、「結果は出ていないけど、ここまでこれた理由は何か?」「自分たちがコントロールできたことは何か、線引きをしてみよう。」「何をしたら乗り越えられる?」と失敗をポジティブに捉えて目標に向かうようなガイディングの視点で質問を投げかけることができています。質問の引き出しが増えたことで、今まで以上にメンバーから意見が出るようになった実感がありますし、それほど率先的ではなかったメンバーからの発言も増えました。

自分自身の行動を起こす意欲をモチベートする(セルフマネジメント)

人の意欲を引き出し、行動を促す上で不可欠かつ見過ごしがちであるのが、そもそも自分自身の意欲、すなわち心理的資本の状態を高く保つことです。ネガティブ感情もポジティブ感情も周囲に伝播します。特に組織のリーダーの影響力は大きく、メンバーへ波及効果は大きくなります。

ガイディングは自分自身のためにも活用できます。セルフマネジメントならぬ”セルフガイディング”の実践です。前述した吉田さんのセルフガイディングについてのコメントをご紹介します。

▼インタビュー抜粋
「意欲が高まらないのには理由がある」と客観的に考えられるようになりました。目標を目標で終わらせずにセルフコントロールしながら、目標に進んでいくことができると感じています。例えば、大きな目標を立てがちな場合、スモールステップで目標を再設定してみようと考えることができます。他にも、私の場合は心理的資本診断の結果からHEROのOptimismが低く出ていたのですが、確かに「あ〜失敗したな。ここまでできなかったな。」と失敗や足りていないことに焦点をあててしまいがちだと気付いたので、今は「60%できた!」と視点を変えてポジティブに捉えることを意識しています。

また、以下のコラムでは心の状態が下降気味の場合の対処について、セルフガイディングの例をPsyCap Master/当社Be&Doメンバーの小西が紹介しています。

心理的資本を高める対話の効果

実際にガイディングを受けた方の反応・変化はどうでしょうか?一例として、当社が提供するマンツーマンの伴走型トレーニングCG1の受講者の声をご紹介します。CG1では、企業の中核人材を対象に、定期的な6ヵ月のオンライン面談でのガイディングを通じた、リーダーシップ発揮支援を行っています。

受講者には事前・中間・事後で心理的資本診断を用いた変化を測定し、レポートを作成しています。2023年11月時点の速報では、心理的資本は平均で11.7%Upとなっています。

実際の受講者の声は受講インタビュー記事よりご覧頂ければと思います。

最後に

組織・個人のWellbeing実現に向けて、心理的資本の概念がこれから実際の職場で普及期を向かえることと思います。いち早くご自身のスキルとして心理的資本を高める手法について学びたい方は、ぜひPsyCap Master認定講座のご受講をご検討ください。講座や認定後につながる同じ志を持った仲間も、心強いご自身の大切な資産になります。

また、私たちBe&Doは人や組織のWellbeingを実現するにはキーマンである中核人材(管理職)のマネジメント変革、リーダーシップ発揮が鍵であると考え、CG1プログラムを通じた支援を行っています。CG1にもご注目ください。

赤澤智貴

赤澤智貴

心理的資本コンサルタント。株式会社Be&Doのプランナー。人材サービス会社での企画営業を経て、2019年8月より現職。社員が楽しく前向きに挑戦し、成果が出る組織作りの実現を目指している。素材メーカーのマネジメント人材育成、組織開発、小売業の人材育成強化などを担当。日本心理的資本協会認定PsyCap Master®。健康経営アドバイザー。アンガーマネジメントファシリテーター。趣味は野球。二児の父。

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